Text/Photo:ちゃんまさ
すでにSynology DS220j本体は購入済みの状態ですが、教科書通りRAID1運用しても面白くありません。そこで、素人なりにアイデアを絞り出し、2ベイを最大限まで活かした「大容量・安心バックアップ・ローコスト」なシステムにチャレンジします!
低コストでNASを運用する
多ベイRAID運用はお金がかかる!
写真引用:シノロジー
そもそもRAIDとは、私のような素人は「RAID=バックアップ」と思いがちですが、現実は異なるようです。
ネット検索すると、RAIDは、故障発生時にシステムを停止することなく復旧するために開発されたもの・・・。そのため、実際の運用は、RAID+外部バックアップが必須となり、RAID1を構築する場合、最低でも3枚のHDDが必要です。冗長性に優れる反面、コスト増加が避けられない業務志向のシステムなのです。
NAS内蔵HDDはPCで読めない!?
NASは、単なる記録メディアではなく、CPUやOSが搭載された「小さなコンピュータ」です。HDDはEXT4形式でフォーマットされているため、HDDを取り出しWindowsやMacに接続しても認識しません。
各社が用意している専用アプリをパソコン側にインストールすれば認識するようですが、素人には敷居が高くなります。
RAID再構築中の電源喪失はトラブルの元
写真引用:アマゾン
RAIDの魅力は、冗長性が高くNASを停止することなく復旧できる点にあります。しかし、リビルド作業は1日単位の時間を要します。万が一ですが、リビルド中に停電したり、電源コードを不意に抜いてしまうと復旧不能に陥る可能性があります。そのため、業務用途のNASでは、無停電装置(UPS)とセットで導入するのが一般的。2重、3重のバックアップは、想像以上にコストが膨らみます。
NASでRAIDを使用しないという選択
NASは、RAID運用を前提に運用するイメージがあります。しかし、個人の主観ですが、家庭や個人事業主が運用する程度ならオーバースペックのような気がします。トラブル発生時、システムダウンして修理対応しても何ら問題ありませんからね。
むしろ、RAID5を家庭で24時間運用すると電気代がかさみ、騒音も気になります。「10年前に撮影した趣味の写真を鑑賞するため、膨大なコストをかけられますか?」ということになります。USB外付HDDに保存して、必要な時に有線接続して閲覧しても何ら問題ありません。
DSM搭載の自動外部バックアップ機能を活用
NASでRAID運用しない場合、別途バックアップ方法を確立する必要があります。
Synology OS「DSM 7.1」には「Hyper Backup」というアプリが付属しています。指定したボリュームを外部接続したHDDに自動バックアップできます。冗長性の低下は「自動バックアップ機能で補うことができるのでは?」と考えました。
通常、Synologyの外部HDDフォーマット形式は「EXT4」です。このフォーマット形式はPCやMACに接続し、直接展開することができません。DSM 7.0以前のバージョンでは、exFATフォーマットを利用するには有料プラグインが必要でしたが、DSM 7.0から無料で利用できるようになりました。外部HDDをexFATフォーマットすることで、PCやMACでも閲覧できる環境でバップアップできるので積極的に活用したいものです。
古くなった写真データは外付HDDへ逃がして容量確保
写真引用:アマゾン
写真データは、撮影後2〜3年が経過すると「開かずのデータ」と化す傾向にあります。というわけで、使用頻度が少なくなった4年目以前の写真データは、別途用意したUSB外付HDD2台にデータを逃がします。そうすることで、NAS内蔵HDDの空き容量を確保し、内蔵HDDの肥大化を抑制できます。
2023年現在、USB外付HDDは4TB前後のものが最もコストパフォーマンスが高く、バッファロー製のUSB外付HDDなら1万円前後で購入できます。USB外付HDDにデータを逃せば長期保存しても電気代がかからないので経済的です。
HDD選び
CMR方式とSMR方式
写真引用:アマゾン
ハードディスクは、記録方式にCMR方式とSMR方式があります。CMR方式は従来型で、SMR方式はコスパに優れた記録方式です。
NASに適したハードディスクは、24時間運用を前提に設計された「NAS用」を使用するのが一般的です。これらのNAS用は、CMR方式を採用する製品がほとんどです。
※一部例外(WD Red)を除く
Synologyがサポートする代表的なHDD
シリーズ名 | 記録方式 | 回転数 | |
WD | REDシリーズ RED Plusシリーズ |
SMR CMR |
5400rpm 5400rpm |
Seagate | IronEolfシリーズ IronEolf Proシリーズ |
CMR CMR |
7200rpm 7200rpm |
東芝 | MNシリーズ | CMR | 7200rpm |
安価なHDDはSMR方式が主流
写真引用:アマゾン
NAS用HDDは24時間運用を前提とするため耐久性に優れる反面、価格が高価です。
個人が気軽に導入できる金額ではないので、メーカーサポート外の自己責任になりますが、バックアップ前提に安価なHDDを使用するのも「アリかな?」と心が揺らぎます。
しかし、安価なHDDはSMR方式がほとんどです。その中でも、数少ないCMR方式の製品を探してみました。
CMR方式で安価な製品 ※メーカーサポート外です
シリーズ | 容量 | 型式 | 回転数 | |
東芝 | 2TB 3TB 4TB 6TB 8TB 10TB |
DT01ACA200-2YW DT01ACA300-2YW MD04ACA400 MD04ACA600 MD06ACA800-2YW MD06ACA10T-2YW |
7200rpm | |
WD | Blue | 4TB 6TB 8TB |
WD40EZAX(WWD40EZAX-EC) WD60EZAX(WWD60EZAX-EC) WD80EAZZ(WD80EAZZ-EC) |
5400〜5640rpm |
いわゆる安価なPC用HDDでCMR方式の製品を販売しているのは、WDと東芝のみの状況でした。Seagateのバラクーダは全てSMR方式でした。
色々検討すると・・・
写真引用:アマゾン
電気代やメーカーサポートを考慮すると、NAS内蔵HDDはWDの「RED Plusシリーズ」がCMR方式かつ5400rpm(低回転・省電力)でベストな選択と言えるかも知れません。
私はコストを最優先したので、メーカーサポート外のWD Blue 8TB(WD80EAZZ)と東芝DT01 3TBを購入しました。DS220jに組み込み、懸念だった省電力機能(ハイバネーション)も正常に機能しています。
SMR方式から選択するなら、HDD温度に着目。SeagateバラクーダよりWD Blue(SMR方式)の方が発熱温度が低い検証結果(雑誌検証記事)を見かけたので、個人的にはWD Blue(SMR方式)を推したいと思います。
DS220jのHDD容量を決定する
運用ルール
- DS220jはRAID運用せず、各ベイ個別に単独運用
- HDDは事務用と写真データ保存用で使い分ける
- バックアップはNASに接続した外部HDDに自動的におこなう
- NAS内部の写真データ保存は3年分程度に抑えて肥大化を防ぐ
- 4年目以降の写真データは、別途USB接続の外部HDDに再コピー後、元データは削除する
私のDS220j運用システム
DS220jをRAID1運用する場合、8TB2枚で8TBの容量しか確保できません。そこでRAIDを使わなければ8TB2枚で16TBまで容量を増やせます。冗長性は、外部HDDを使って代用します。
DS220j 内蔵HDD
HDD | フォーマット形式 | 使用目的 | |
HDD 1 | 3TB 東芝 MD04ACA400 サポート外 |
ext4 | 事務データ保存用 |
HDD 2 | 8TB WD WD80EAZZ サポート外 |
ext4 | 写真データ保存 (年度ことにフォルダー分類) |
バックアップ用 外部HDD
HDD | フォーマット形式 | バックアップ方法 | |
外部 HDD 1 | 3TB 余り物 | exFAT | Hyper Backup |
外部 HDD 2 | 3TB 余り物 | exFAT | Hyper Backup |
HDD2のバックアップ用HDDは本来8TB以上必要ですが、1年あたり1〜1.5TB程度消費する計算なので、当分は余り物の3TBで運用します。
バックアップ用HDDケースは「アイネックス USB3.0接続 UASP対応 3.5インチHDDケース HDE-08」を購入。DS220jに接続し、本体ハイバネーション動作、本体ハイバネーション動作時のHDE-08電源連動OFF(HDDが停止)が動作することを確認しました。
4年目以降の写真はUSB外付HDDに最終保存
容量 | メーカー | バックアップ方法 | |
USB外付HDD 1 | 4〜6TB | バッファローなど | 手動 |
USB外付HDD 2 | 4〜6TB | バッファローなど | 手動 |
NAS内蔵HDDに8TBをチョイスしたので、約4年のデータを保存することできます。しかし、5年目以降は残量が少なくなってくるので、1年単位でUSB外付HDDに逃す作業が必要です。
リスク分散するため、異なるメーカー(ファッファローと東芝など)の製品で揃える予定です。
DS220jの転送速度は1GbE上限に到達
DS220jは、上位機種に比べてメモリ搭載量が少なく、増設もできません。「メモリ不足が心配」と思われる人も多いと思いますが、ファイルサーバーとして利用する限り、読み書きスピードは全く問題ありません。家庭用機のDS220jでも、イーサネット(1GbE)の上限スピードに達しているため、LAN環境を全面的に見直さない限りスピードアップは望めません。
DS220jはモデル末期の製品だけに、近い将来新型が発売されますが。しかし、ワンランク上のモデルは、新型DS223が発売されましたが、2.5GbEの採用は見送られました。DS220j後継機種もCPU変更に止まり、2.5GbEは採用されない予想です。
また、DS223は製品価格が高くなりました。DS220j後継機種も値上がりする可能性があり、DS220jが安価に購入できるならモデル末期で購入しても支障ないと思います。
少しずつシステム構築中
予算に限りがあるので、一気に作業が進みません。現状は、DS220jにWD Blue 8TB HDDと東芝3TB HDDを非RAIDで組み込み、動作確認が取れたところです。
仮ディスクを使ったバックアップや外部HDDからの復元もテストしました。少しずつ正規パーツに置き換えていく予定です。
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