キヤノン新型プリンタPRO-G1とPRO-S1の2機種が登場しました。実質的なPRO-10S・PRO-100Sの後継モデルです。キヤノンの慣例からすると今後約5年間フラッグシップモデルを所有する優越感に浸れ、販売終了後5年間修理対応できるので10年近く使用できると予測できます。
この製品の特徴は、ハイアマチュアや事業用途を考慮した「写真高画質」にこだわったプロスペックモデルであること。デジタルカメラで撮影した精細さや階調を保ったまま、正確な色で印刷できます。その反面、普及機に搭載されるスキャナ機能や本体収納式給紙トレイは省かれています。
外観デザインは共通ですが、表面仕上げにより差別化が図られています。どちらを選べばわからない人のために「写真品質」に特化した商品選びをわかりやすく解説します。
PRO-G1とPRO-S1の決定的な違いは?
インクの違いによる印刷イメージ
ひとことで言えば使用する「インク」が違います。
【 PRO-G1 = 顔料インク PRO-S1 = 染料インク 】
インクの違いを思い浮かべましょう。普通紙に油性ペンで文字を書くと、滲んだ経験ありませんか? 顔料インクと染料インクの違いは、用紙にインクを噴射した時「にじむ」か「にじまないか」にあります。
●染料インクのイメージ
インクジット専用用紙必須。用紙の表面にインクがにじむコート層があり、噴射されたインクを吸収します。
●顔料インクのイメージ
インクジット専用用紙以外でも高品質な印刷が可能。インクは用紙に染み込まず、インクが噴射されない部分に透明インク(クロマオプティマイザー)を噴射して透明感を引き出します。
インクの特徴や特性
【 顔料インク = にじまない 染料インク = にじむ(インクジット専用用紙必須)】
一般的にインクジットプリンタの多くは染料インクを用いています。染料インクはにじむ特性があるので「インクジット専用用紙」の使用を前提に設計されています。インクジット用光沢紙に印刷すると「コート層」がインクを吸収し、銀塩写真同等の光沢感で印刷できます。反面、コピー用紙やハガキなどの上質紙(コート層のない紙)に印刷するとインクが滲み、高精細・高演色で印刷できない傾向にあります。
顔料インクの特徴は、用紙ににじまず用紙表面で固着します。少し誤解を招く恐れがありますが、プラスチックの表面に印刷するような感じと思ってください。
インクが滲みづらい特性があるため、インクジット専用以外の用紙に印刷でき、和紙などにも印刷できます。乾燥後、水に濡れてもにじまない特徴があります。反面、表面が傷がつきやすい傾向にあります。
インクの保存性
PRO-G1顔料インクの保存性
耐光性約60年、耐ガス性約60年、アルバム保存約200年
PRO-S1染料インクの保存性
耐光性約50年、耐ガス性(耐オゾン)約10年、アルバム保存約200年
染料&顔料 どっちがいいの?
染料インクには染料の良さ、顔料インクには顔料の良さがあります。それぞれの特徴をわかりやすくあげてみましょう。
染料インクが有利な点
光沢感を重視したい ▶︎ 染料プリンタが有利
コストを抑えたい ▶︎ 染料プリンタが有利
印刷時間を重視したい ▶︎ 染料プリンタが有利
写真をラフに使いたい ▶︎ 染料プリンタが有利
インク詰まりを気にする ▶︎ 染料プリンタが有利
顔料インクが有利な点
深みのある階調を重視したい ▶︎ 顔料プリンタが有利
用紙を選ばず印刷したい ▶︎ 顔料プリンタが有利
長期保存を重視したい ▶︎ 顔料プリンタが有利
MacOSX用プリンタドライバを用意
キヤノンは、数年前よりPIXUSシリーズのMacOSX用プリンタドランバーの開発を放棄したため、Macユーザーはプリンタ本来の性能を引き出せませんでした。
ところが、PRO-G1とPRO-S1の両機種は、MacOSX用プリンタドランバーを用意。カラーマネージメント機能や印刷品質を高度に調整できるようになりました。マックユーザーにとっては大歓迎ですね。
付属アプリは共通
Professional Print & Layout
カラーマネージメント対応のプリント専用アプリ。パターン印刷、モノクロ写真モード印刷、テキスト印刷機能、センタリングメニュー(余白)、ギャラリーラップなどに対応。
Digital Photo Professional
Photoshopなどのアプリ用に開発されたプラグイン。さまざまな画像編集ソストとシームレスに連携を実現。通常のプリンタドライバ経由の出力も可能。
Media Configuration Tool
メディアごとに高品位な印刷を行うための用紙設定情報を作成・管理。他社製の用紙も追加可能。
など。
※前モデルに用意されていたカラープロファイル作成ソフトが廃止された点は残念で仕方ありません。
スペック比較
imagePROGRAF PRO-G1 | PIXUS PRO-S1 | |
本体色(表面仕上げ) | 黒(吹き付け仕上げ) | 黒(ヘアライン仕上げ) |
サイズ 横幅×奥行×高さmm | 639×379×200mm | 639×379×200mm |
本体重量 | 14.4kg | 14.1kg |
液晶モニタ | 3.0型液晶パネル | 3.0型液晶パネル |
解像度 横×縦(ノズル数) | 4800×2400(7680ノズル) 各768ノズル |
4800×2400(6144ノズル) 各768ノズル |
L版印刷速度 | 65秒/枚 | 30秒/枚 |
L版印刷コスト | 約25.7円 | 約22.3円 |
用紙サイズ | A3ノビ〜L版 | A3ノビ〜L版 |
ネットワーク | 有線 無線LAN 2.5Ghz / 5GHz |
有線 無線LAN 2.5Ghz / 5GHz |
スキャナー | 非対応 | 非対応 |
両面プリント | 非対応 | 非対応 |
給紙 | 上・手差し・マルチトレイ | 上・手差し・マルチトレイ |
ディスク印刷 | 対応 | 対応 |
スマホプリント | 対応 | 対応 |
インク | 顔料10色 MBK/PBK/C/M/Y/GY/PC/PM/R/CO |
染料8色 BK/C/M/Y/GY/PC/PM/LGY |
ノズルリカバリーシステム
動的色間補正 リアルタイム駆動制御 斜行補正機構 |
搭載
搭載 搭載 搭載 |
ー
搭載 搭載 搭載 |
対応OS | Windows 7 SP1〜 MacOSX v10.11.6〜 |
Windows 7 SP1〜 MacOSX v10.11.6〜 |
価格 | ¥85,295円 ※2021年2月11日現在 |
¥69,800円 ※2021年2月11日現在 |
キヤノンブランド内での位置付け
PRO-G1 = imagePROGRAFシリーズの最下位モデル
PRO-S1 = PIXUSシリーズの最上位モデル
PRO-G1は業務用カテゴリーのローエンドモデル、PRO-S1は家庭用カテゴリーのフラッグシップモデルに属します。インクの入手性は、家庭用カテゴリーの方が容易かもしれません。
PRO-G1の方が高性能な気がしますが、上位機種のPRO-1000に搭載されるカラーキャリブレーション機能は搭載されていません。民生機同等の性能と理解した方が良さそうです。過度な期待は禁物ですね。
仕様の違いを抜粋
本体表面仕上げ 表面の仕上げの違いなので好みですね。
本体重量 PIXUS PRO-S1が300g軽量です。
印刷速度 PIXUS PRO-S1の方が約2倍高速です。
印刷コスト L版1枚あたりの印刷コストは、PIXUS PRO-S1の方が3.4円安価です。
ノズルリカバリーシステム PIXUS PRO-G1のみに搭載。インク詰まり時にドット抜けを防ぐ効果があります。
PIXUS PRO-S1は、インク詰まりしづらいので省かれたのだと思います。
インクの市場価格を調査
PIXUS PRO-S1用「新8色染料インク」
全8色(BK/C/M/Y/GY/PC/PM/LGY)
大手通販A価格 ¥1,355円(1本) ※2021年2月11日現在
※8本価格 ¥10,840円 ※2021年2月11日現在
imagePROGRAF PRO-G1用「LUCIA PRO ink」
全10色(各768ノズル)
大手通販A価格 ¥1,455円(1本) ※2021年2月11日現在
※10本価格 ¥14,550円 ※2021年2月11日現在
私個人は「染料インクプリンター」が好み
雑誌などのレビューを見ると「顔料インク機=高性能」のような記事を見かけます。そのため、ハイアマチュアの方ほど顔料インクを選びがちです。しかし、写真をプリントして配布する時、喜ばれるのは「染料プリンタ」で印刷した光沢感が勝る傾向です。
キヤノンの染料プリンタは「インク詰まりに強い」印象です。インク詰まりによるドット抜けが発生しづらい=ノズルクリーニングする機会が少なく、イラっとすることがありません。
写真の保存も、直射日光が当たるような場所に放置しなければ、さほど気にすることはありません。そもそも、劣化に強いといわれる銀塩写真も20年も経過すれば相当色褪せしますからね。
細かな点では、顔料プリンタは印刷面を斜めからみるとブロンズ現象と言われる「マゼンタを帯びた独特の反射」を感じます。その他、表面に擦り傷がつきやすい印象です。
そのような点を総合的に考慮すると、仕事前提で使用するならPRO-S1かな?思います。
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