Text/Photo:ちゃんまさ
カメラマンの必須アイテムといえば「画像処理ソフト」を動かすためのパソコンですよね。最近では、ニューラルエンジンを活用したエフェクトが急増中なので、画像処理がどんどん重くなっています。
デスクトップパソコンを導入するのが理想ですが「設置スペースが確保できない」などの理由で断念せざえるを得ない人も多いようです。
というわけで「人気の画像処理アプリ」もそこそこ快適に動作すると言われるミニPCを、スペック重視で選りすぐってみました。
画像処理系アプリは動作が重い!
RAW現像ソフトや画像処理アプリは、とにかく動作が重いことで有名です。人気のPureRAWやSharpen AIは、古いPCで処理すると1枚の写真に15分や30分要することがあります。というわけで、処理に掛かる時間を手持ちのPCで測定しました。
手持ちのPCで処理時間を測定
DXO PureRAW 3は、数ある画像処理アプリの中でも「処理が重い」ことで有名です。実際に、どれぐらいの時間がかかるのか、6100画素の非圧縮RAWで試してみました。
テスト画像:ソニーα7RV 非圧縮RAW(6100万画素)
DXO PureRAW 3 | Topaz Sharpen AI | |||
DEEPPRIME XD | DEEPPRIME | Motion Blur | Too Soft | |
Macmini2018 i7 3.2GHz 6コア12スレット Intel 630 |
CPU処理 4分5秒 |
CPU処理 5分30秒 |
CPU処理 55秒 |
|
自作ミニPC Ryzen7 4750G 8コア12スレット 内蔵GPU Vega |
CPU処理 8分30秒 GPU処理 2分17秒 |
CPU処理 1分43秒 GPU処理 58秒 |
CPU処理 3分12秒 GPU処理 1分24秒 |
CPU処理 2分00秒 GPU処理 28秒 |
自作タワーPC Ryzen9 5950X 16コア32スレット RTX3080 |
GPU処理 23秒 |
GPU処理 18秒 |
CPU処理 2分09秒 GPU処理 22秒 |
PhotoshopやLightroomは、CPU性能が使い勝手を左右する傾向にありますが、画像処理系アプリは「GPU処理」を前提にしたプログラム設計がなされています。最新のPureRAWは、さらに最新の人工知能を活用した「ニューラルエンジン」で処理していることが明記され、1秒間に数兆レベルの計算ができる性能が要求されます。
Topaz Sharpen AI「Motion Blurの処理時間」を比較 ※6100万画素
- Ryzen9 5950X 16コア32スレット = 2分09秒 ※最強クラスのCPUで処理
- Ryzen7 4750G内蔵GPU Vega = 1分24秒 ※非力なCPU内蔵GPUで処理
- Ryzen9 5950X+RTX3080 = 22秒 ※ハイエンドGPUで処理
実際にテストすると、GPU性能が高くなるにつれ処理時間が短縮する結果になりました。注目すべきは、16コア32スレットの超高性能CPU処理より、ミドルクラスの内蔵GPUで処理した方が速い結果があらわれました。CPU性能よりもGPU性能が重要な結果として再確認できました。
コストパフォーマンスを狙うなら、CPU性能は8コア16スレット程度に抑え、浮いた予算をGPU性能に割り振った方が良い結果が得られそうです。
参考までに、今回のテストは「6100万画素」のRAWデータでテストしました。データ容量の小さい2400万画素なら処理時間は半分程度に短縮されます。
処理時間が10分以上かかる場合はPC買い替え時期かも
現在使用中のPCにグラフィックボートの搭載がなく、PureRAW 3 DEEPPRIME XDの処理に10分以上かかる時は「パソコン買い換え時期」と言えそうです。CPU性能はそこそこに抑え「GPU付きPC」を狙い買いすれば高速処理が見込めます。
GPUは必須
テストで感じた個人の主観は、画像処理アプリはGPU必須ということ。さらに、人工知能の処理に長けたニューラルエンジンの搭載が必須になりそうです。また、動画と写真でもGPUに求められる性能が異なってきます。
- 画像処理 = 機械学習用専用プロセッサーの搭載
- 動画編集 = ハードウェアエンコーダー・デコーダーの搭載
グラフィックカードは、NVIDIA(GeForce)とAMD(Radeon)があります。PureRAWを重視するなら最新GeForce、Sharpen AIを重視するなら最新Radeonの相性が良さそうです。
家電量販店のPC購入は避けたい
パソコンを購入する時、真っ先に思い浮かぶのが家電量販店ではないでしょうか? 多くのパソコンが展示されていますので、欲しいパソコンが見つかるはずです。しかし、残念ながらRAW現像に最適なパソコンは販売されていない、または、驚くべき高額な価格で購入することになります。
RAW現像に最適なパソコンは、ジャンル的には「ゲーム用」または「クリエーター用」に区分され、オーダーメードできるメーカーで購入するのが一般的です。
といいつつ、ここでは最近注目を集めている「高性能ミニPC」に注目し、RAW現像に使えるパソコンを探してみました。
高性能ミニPCが最新トレンド!
いわゆるクリエーター向けパソコンは、ノート型からタワー型まで「価格・性能・形状」など、さまざまな製品が発売されています。高額な製品を購入すれば、自ずと性能がついてきますが、カメラマンはレンズを買ったりカメラを買い換えるなど、カメラに莫大な資金を要します。PCは「ほど良いコストでハイパフォーマンスを得たい」なら、画像処理アプリの処理に適したPCを狙い買いする必要があります。
そこで今注目を集めているのが「ミニPC」のジャンル。中華系企業中心の市場ですが、小型高性能で価格が安く、意識高い系の人から注目を集めています。いわゆる人気爆発前夜の状況です。Macなら、Mac miniが人気です。
数あるメーカーの中で「MINISFORAM」というブランドがミニPC界のトレンドを牽引する状況です。
ノートPC用部品を流用して省スペースと高コスパを実現
MINISFORAMの製品は、基本的にノートPCから「モニター・キーボード・バッテリー」を省いた製品といえばわかりやすいでしょう。電力や排熱がボトムニックになりタワー型と比較するとパワーは若干劣る傾向にあります。しかし、ノートPCから「モニター・キーボード・バッテリー」を省いた安価な価格で購入できるメリットがあります。
ただし、ノートPCを使用中の方は、別途「モニター・キーボード・マウス」が必要になるため注意が必要です。
新興メーカーならではの機動力と不安
MINISFORAMは、いわゆる中華系の新興メーカーです。大手メーカーでは製品化できない「尖った製品」を積極的に製品化し、規模を大きくしてきたメーカーです。
そのため、アフターサービスや耐久性は未知数です。アスターを重視する几帳面な人は、有名メーカーの製品を購入した方が精神的に楽になれるかもしれません。しかし、MINISFORAMの製品には、高性能&低価格でありながら「超軽量」という魅力があります。
ミニPCのデメリット
ミニPCのデメリットは、小さな筐体に高性能CPU(GPU)を内蔵するため、放熱性能が芳しくありません。冷却はおもに、小型電動ファンでおこなうため、負荷が大きくなると大きな駆動音を奏でます。
冷却性能が追いつかない時はCPUクロックを抑えられるためパワーが低下します。
これは、ノートパソコンに共通する動作なので「ミニPCだけが劣る」わけではありません。
画像処理オススメPC3選
MINISFORAMは、製品開発力が凄まじく、数ヶ月おきに新製品が発売される状況です。製品が乱立状態にあり、初心者にとって「どの製品を選べが良いかわかりずらい」状況にあります。
そこで、PhotoshopやLightroomとった定番ソフトのほか、PureRAWやSharpen AIといった画像処理アプリに適したモデルを選りすぐってみました。
1 Radeon RX6600M搭載のハイコスパモデル
アマゾンで販売中です▶︎ Minisfolum HX77G
CPU | GPU |
AMD Ryzen7 7735HS | Radeon RX6600M(DDR6 8GB) |
HX77Gは、HX80Gの後継機種です。CPUに最新Ryzen7 7735HS(モバイル用)を搭載。8コア16スレットモデルなのでPhotoshopやLightroomでもストレスなく動作します。ストレージはM.2 SSD(PCIe4.0)、メモリはDDR5(SODIMM×2)、OSはWindows11 Proを搭載します。
GPUはRX6600のモバイル版を搭載。1,792コアによる高速処理で、Sharpen AIやPureRAWを高速処理できます。最大4画面(4K60Hz×2、8K60Hz×2)に対応します。
2 RTX3000番搭載の性能重視モデル
アマゾンで販売中です▶︎ Minisfolum NUCXI7
CPU | GPU |
Intel® Core™ i7-11800H | Nvidia RTX3070(DDR6 8GB) |
CPUはインテル11世代i7のモバイル版を搭載。8コア16スレットモデルなのでPhotoshopやLightroomもストレスなく動作します。ストレージはM.2 SSD(PCIe4.0)、メモリはDDR4(SODIMM×2)、OSはWindows11 Proを搭載。
GPUはRTX2世代目の技術が活かされたNvidia 3070。コア数有利なSharpen AI処理はもちろん、AI専用Tensorコアを搭載しているのでPureRAWの現像で効果が見込めそうです。最大2画面(4K60Hz×1、8K60Hz×1)に対応します。
3 Ryzen最新CPUを搭載したCPU内蔵GPUモデル
アマゾンで販売中です▶︎ Minisfolum UM790 Pro
CPU | GPU |
AMD Ryzen 9 7940HS | Radeon 780M(CPU内蔵) |
CPUは最新Ryzen 9 7940HS(モバイル用)を搭載。8コア16スレットモデルなのでPhotoshopやLightroomもストレスなく動作します。ストレージはM.2 SSD(PCIe4.0)、メモリはDDR5(SODIMM×2)、OSはWindows11 Proを搭載。
GPUはCPU内蔵型のRadeon 780M(12コア)を搭載。GTX1650相当の性能があり、8K60Hz出力できる性能を備えているので侮れません。GPU内蔵型でありながらSharpen AIやPureRAWを処理できます。
注意点は、CPUメモリとGPUメモリを共用するため、メモリ32GB搭載は必須。予算があれば64GB搭載も検討したいところですが、価格がHX77G大差なくなるジレンマ(性能はHX77Gの方が上)があります。
UM790 Proは、独立型GPU搭載モデルするHX77Gと比較すると処理時間は長くなりますが、3000万画素程度の画像編集な問題ないでしょう。6000万画素をガッツリ編集するには役不足なので、HX77G導入をオススメします。
ミニPCの注意点
MINISFORAMの製品は、ノートPC用部品を使った設計です。発熱や電源容量に制限があるため、電源制限により本来のポテンシャルを発揮できない恐れがあります。
Ryzen型番末尾に「U」がつくモデルは省電力版です。バッテリー駆動するノートPCは長時間駆動の点で有利になりますが、出力が制限されるデメリットがあります。100V電源を常時使用するミニPCに省電力仕様は不要と考え、パフォーマンスが得られる「HやHS」が付いたモデルから選択することを推奨します。
Ryzenの内蔵GPUは、6000型番以降のモデルに最新GPUを内蔵します。外部GPUが無い機種の場合、型番が6000または7000番台かつ末尾に「HやHS」のモデルから選択することをオススメします。
購入方法
MINISFORAMの製品は、販売ルートがたくさんあります。
- MINISFORAM公式WEBショップ
- リンクスインターナショナル(日本代理店)
- アマゾン(MINISFORAM直営と代理店販売が混在)
MINISFORAM公式WEBショップからの購入は、香港からの発送になるため納期が2週間程度かかりますのでお勧めできません。
納期的に有利なのは、アマゾンから購入する方法です。また、楽天経済圏やヤフー経済圏の方は、リンクスインターナショナルが卸した製品をショップ購入できます。
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