FE 400-800mm F 6.3-8 G OSS「解像力とテレコン相性」をレビュー

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レンズ

写真&原稿:ちゃんまさ

ソニーから FE 400-800mm F6.3-8 G OSS が発売されました。「αは望遠レンズのラインナップが弱い」と言われますが、待望の800mmレンズの登場は、野鳥や飛行機を被写体に撮影するユーザーにとっては朗報と言えるでしょう。

ここでは FE 600mm F4 GM OSS を所有するブログ管理人が、FE 400-800mm F6.3-8 G OSS の解像度をシビアにテスト。ユーザーの多くが気になる「テレコンとの相性」を検証するため、1.4×テレコン(SEL14TC) と 2.0×テレコン(SEL20TC) の組み合わせもレビューします。

このブログ記事が、購入前の検討材料として参考になれば幸いです。

FE400-800mm F6.3-8 G OSSの外観

すでに、FE400-800mm F6.3-8 G OSSのレビュー記事はネットに溢れている状態なので、基本スペックなどの情報は割愛します。

▲レンズ本体の外観

▲フード付きの外観

▲フード有無の斜め前からの外観

▲FE100-400mm F4.5-5.6 OSSと比較

FE400-800mm F6.3-8 G OSSの特徴

FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSSの特徴の中から、注目すべき「3つのポイント」を紹介します。

三脚座の取り付け強度が大幅向上

▲FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSSの三脚座は、工具不要の取り外し式でしたが、FE 400-800mm F6.3-8 G OSSはボルト4箇所による固定に変更されました。強度アップにともない、剛性も向上しています。

FULL TIME DMFスイッチ付き

▲FE 400-800mm F6.3-8 G OSSには、本体にFULL TIME DMFスイッチが採用されました。野鳥撮影時に手前に枝があるような場合でも、手動調整により、枝の奥の野鳥にAFが追従しやすくなります。

滑らかなズームリングの動作

▲倍率が2倍と控えめなため、ズームリングの動作は全域でトルクが一定しており、動きも滑らかで軽快に操作できます。広角端から望遠端までのズーム角度も少なく、ワンアクションで操作が可能です。

FE 400-800mm F6.3-8 G OSSの購入前に知っておきたいこと

カメラの位相差AF動作F値を確認

ソニーαシリーズは、カメラごとに位相差AFが動作するF値が定められています。この数値を下回る暗いレンズを組み合わせると、AF制御が**コントラストAF(像面位相差AFが動作しない)**のみとなり、コンティニュアスAF性能が大きく低下します。

α7 IV以降のカメラは問題ないと思われますが、α7 IIIなどのモデルではテレコン装着時に像面位相差AFが使えない可能性があるため、ご注意ください。

105mmの大径フィルターが必要

▲FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSSのフィルター径は95mmですが、FE 400-800mm F6.3-8 G OSSは105mmの大径タイプ。そのため、プロテクターを購入するだけでも高価になります。流し撮りなどでスローシャッターを使いたい場合はNDフィルターが必要ですが、価格が高く、選択肢も限られます。

フロントヘビーな重量配分

▲FE 400-800mm F6.3-8 G OSSはズームレンズのためレンズ枚数が多く、重量バランスがフロント寄りになります。FE 600mm F4 GM OSSはカメラ寄りの重量バランスのため、軽く感じる場合があります。

手持ち撮影時は「G」マーク付近を握ることになりますが、ゴム製のグリップがないため滑りやすいです。

手持ちの重量感は、左手で三脚座を支えると重く感じますが、レンズ先端やレンズフードで支えると軽く感じます。私は手持ちする際、レンズフードの先端を支えるようにしています。

FE 400-800mm F6.3-8 G OSSのF値変化

FE 400-800mm F6.3-8 G OSSの焦点距離別のF値を独自計測しました。

焦点距離 400~約480mm 約480~600mm 約600~800mm
開放F値 F:6.3 F:7.1 F:8.0

FE 400-800mm F6.3-8 G OSSの解像力

α7R Vに「FE 400-800mm F6.3-8 G OSS」と「FE 600mm F4 GM OSS」を組み合わせて撮影しました。

FE 600mm F4 GM OSSと比較

▲FE400800G(800mm)の画角

▲FE600GM(600mm)の画角

600mmと600mmの画角の違いは、こんな感じです。

焦点距離と解放F値
  • FE 400-800mm F6.3-8 G OSS = 最大焦点距離:800mm 開放絞り値:F8.0

  • FE 600mm F4 GM OSS = 最大焦点距離:600mm 開放絞り値:F4.0

▲FE400800G切り出し(600GMにサイズを合わせています)※画像クリックで拡大

▲FE600GM等倍切り出し
※画像クリックで拡大

600mmで比較すると、天守閣の金網はFE 600mm F4 GM OSSの方が解像しています。4倍近い価格差を考慮すれば、当然の結果ともいえます。

FE 600mm F4 GM OSS+14TCと比較

▲FE400800G(800mm)の画角

▲FE600GM+14TC(840mm)の画角

800mmと840mmの画角の違いは、こんな感じです。

FE 400-800mm F6.3-8 G OSSの800mmと、FE 600mm F4 GM OSS+14TC(1.4倍テレコンバーター/840mm)を比較。いわゆる800mm域の解像テストは、望遠マニアの方には気になるポイントではないでしょうか?

焦点距離と解放F値
  • FE 400-800mm F6.3-8 G OSS = 最大焦点距離:800mm 解放絞り値:F8.0
  • FE 600mm F4 GM OSS + 14TC = 最大焦点距離:840mm 解放絞り値:F5.6
解像感

▲FE400800G等倍切り出し
※画像クリックで拡大

▲FE600GM+14TC等倍切り出し
※画像クリックで拡大

JPEGの撮って出し比較では、FE 600mm F4 GM OSS+14TCの解像力が一歩優れたという印象です。価格差を考えれば妥当ともいえる結果です。

しかし、FE 400-800mm F6.3-8 G OSSの800mmは、RAWデータをアンシャープマスク処理することで、解像感を高められる余力があると感じました(FE 600mm F4.0+14TCはやや伸び代が少ない?)。RAW現像によって、解像差を詰めることができます。

FE 600mm F4 GM OSS+20TCと比較

▲FE400800G+14TC(1,120mm)の画角

▲FE600GM+12TC(1,200mm)の画角

FE 400-800mm F6.3-8 G OSS+14TC(1.4倍テレコン/1,120mm)と、FE 600mm F4 GM OSS+20TC(2倍テレコン/1,200mm)の画質比較。

1,120mmという焦点距離は、ソニーαシステムで2番目の超望遠域になります。1,120mmと1,200mmの画角差は、下の画像のような感じです。

焦点距離と解放F値
  • FE 400-800mm F6.3-8 G OSS + 14TC = 最大焦点距離:1,120mm 解放絞り値:F11.0
  • FE 600mm F4 GM OSS + 20TC = 最大焦点距離:1,200mm 解放絞り値:F8.0
解像感

▲FE400800G+14TC等倍切り出し
※画像クリックで拡大

▲FE600GM+12TC等倍切り出し
※画像クリックで拡大

結果は、FE 600mm F4 GM OSS+20TCの画質が僅差で上回った印象です(※FE 600mm GM所有者の主観を多く含みます)。

ただし、RAW現像でシャープネスを追い込めば、FE 400-800mm F6.3-8 G OSS+14TCでも遜色ないレベルまで持っていけます。

ブログ管理人は岐阜城の月城写真で1200mmを常用しますが、

「FE 400-800mm F6.3-8 G OSS+14TCの組み合わせでも、RAW現像をしっかり行えばFE 600mm F4 GM OSS+20TCに迫る画質が得られる」

という事実は、コストを考慮すれば衝撃的です。

JPEG無加工 vs RAW現像

Before imageAfter image

α7R Vと「FE 400-800mm F6.3-8 G OSS」の組み合わせで撮影した作例です。左がRAW現像でシャープネス処理したもの、右がJPEG撮って出しになります。

注目してほしいのは、天守閣の金網や瓦、金の装飾部分。RAW現像でシャープネス処理をおこなった画像は、これらの細部がよりクッキリと解像しており、被写体の立体感も増しています。

JPEGでも十分綺麗ですが、RAW現像によってシャープネスを上積みできることがはっきりと分かります。

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FE 400-800mm F6.3-8 G OSSの焦点距離

FE 400-800mm F6.3-8 G OSSは、焦点距離が400〜800mmで可変するズームレンズです。

飛行機撮影の醍醐味は、戦闘機の機動飛行になりますよね。急旋回やハイレートクライムでベストショットを狙う「中級者以上」にとっては、最適な焦点距離になります。野鳥も同様です。

しかし、飛行機撮影でも戦闘機の着陸や旅客機を撮影する目的では、広角端400mmでは「引けない恐れ」があります。

上の写真は、岐阜基地「空の森運動公園」から撮影した着陸シーンです。広角端(400mm)で撮影した作例ですが、小型機のT4がギリギリ収まる感じです。機体サイスが大きくなるF2やF15は、フレームに収まらないでしょう。

同じ場所から、望遠端(800mm)で撮影した作例がこちら。100-400mmでは成し得ない、迫力のあるカットが撮影できます。

FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSSで妥協すべきか?

戦闘機や野鳥を撮影する場合、テクニックの向上にともない、必ず「大きく撮影したい」という欲望に駆り立てられます。FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSSで妥協すると、使い勝手は良いかもしれませんが、その点で「後悔するのでは?」と思います。

理想的な戦闘機撮影用レンズセット

  • FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS
  • FE 400-800mm F6.3-8 G OSS

個人的には、上記2本体制をお勧めします。FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSSは中古で構いませんので、100mm〜800mmまでの範囲に対応できる体制を導入したいですね。究極は、600GMと14TCの組み合わせですが・・・。

FE 400-800mm F6.3-8 G OSS × α7R IVのAF追従

FE 400-800mm F6.3-8 G OSSのAF-C(コンティニアスAF)での動体追従性能をチェックします。

今回は、α1IIの納品遅延により、α7R IV+FE 400-800mm F6.3-8 G OSSの組み合わせでAF-C性能を検証しました。AFは、無音で高速に動作しますので、動体撮影の期待が高まります。

【1】飛行機の着陸シーンをAF-C撮影

800mmノートリミングの作例です。被写体までの距離が近く、速度も比較的遅いという条件下ですが、AF-Cの追従精度は非常に良好。「合従率はかなり高い」と肌で感じるレベルでした。

【2】飛行機の離陸シーンをAF-C撮影

こちらも800mmノートリの作例です。高度があるぶん機体は小さく写りますが、AFはしっかり追従しました。
追尾の安定感は好印象です。

【3】旋回シーンをAF-C撮影

こちらも800mmノートリの作例です。距離がさらに離れるため、AF精度よりも大気の揺らぎによる画質低下が目立ちます。文字などのディテール描写はやや甘めで、このあたりは大気の条件次第になります。

※画像クリックで拡大

等倍切り出し。ここまで距離が離れると大気の揺らぎの影響をもろにくらいます。この写真は、JPEGの写真を等倍で切り出したものですが、文字の描写が甘くなっています。撮影日は、大気のコンディションが比較的良かったので、通常はこの写真より解像が悪化する恐れがあります。

【4】ツバメの飛翔(参考撮影)をAF-Cで撮影

待ち時間にツバメが飛んできましたので撮影しました。ガチな写真ではありませんが、8カット撮影した中で、3枚がピントあっていました。戦闘機のハイレートや機動飛行ぐらいなら、α7RIVでも撮影できると思います。

ただし、FE 400-800mm F6.3-8 G OSSで本格的な動体撮影するには「120fps測距」に対応したカメラが理想であり、現状はα1IIとα9IIIの二択になります。この2機種なら、1.4TCを装着した状態でもガチな動体撮影に対応すると思います。

α7RIVでミサゴやカワセミの着水シーンや飛翔するツバメを撮影する場合は、肌感覚になりますがガチピンの打率の低下が懸念され、相当なストレスを感じるはずです。α1IIとα9IIIの新品が手が出ない場合は「中古のα1」の購入も視野に入れたいところです。

大気の揺らぎ(陽炎)の影響

FE 400-800mm F6.3-8 G OSSは800mmの焦点距離があるため、遠くの被写体が撮影したくなりますよね。しかし、日中に撮影すると高確率で「陽炎」の影響により解像力が著しく低下します。購入後、窓から50m先の電柱を撮影しても「陽炎」の影響を受けます。

この自然現象を知らない人の中には「解像が甘い」とサポートに凸電する人もいると思いますが、恥ずかしい行為なので避けたいところです。昼間の空港で飛行機を撮影する場合も、90%以上の確率で解像しないはずです。800mmという焦点距離は、それほどシビアなことを知っておいてください。

FE 400-800mm F6.3-8 G OSS × α7R IVの手ぶれ補正

FE 400-800mm F6.3-8 G OSSは、レンズ本体に3つの手ぶれ補正モードの切り替えスイッチが付いています。

  • MODE1 → 静止状態の撮影
  • MODE2 → 流し撮り撮影
  • MODE3 → ファインダー像の安定性重視

静止状態の手ブレ補正は、α7R IVが協調制御に対応したカメラというこもあり、相当効きが良い印象でした。協調制御対応外のカメラの場合は、効き具合が低下するようです。

流し撮り撮影は、水平状態の真横方向の動作は効果が得られることがありますが、飛行機のような「仰ぎ角」のついた状態では誤作動が生じやすくなります。個人的には「飛行機の流し撮りはOFF」で撮影することが多いです。

MODE3は、スポーツなどを高速シャッターで撮影する場合に有効だと思います。ただし、「仰ぎ角」のついた状態では誤作動が生じやすくなります。

これらの挙動は、ソニーαシステム共通の挙動で、FE 400-800mm F6.3-8 G OSS特有の挙動ではありません。被写体の状況に応じてMODE1とそれ以外を切り替える必要があります。

MODE1で流し撮りをすると、ほぼ全損になるので注意してください。

まとめ

FE 400-800mm F6.3-8 G OSSは、800mmの焦点距離で遠くの被写体を撮影するのに優れていますが、日中の撮影時には「陽炎」の影響を受けやすいことに注意が必要です。

高温時や空港などでは、解像力が低下しやすく、遠距離の撮影には大気の揺らぎが大きな影響を与えます。これを理解していないと「解像が甘い」と感じることもあるかもしれませんが、自然現象として避けられないものです。

FE 400-800mm F6.3-8 G OSSのポテンシャルを引き出すためには、撮影日の天候、気温、時間帯に考慮することがとても重要です。

この記事を書いた人
ちゃんまさ

雑誌編集部勤務を経て、個人制作会社を設立。30年以上にわたり雑誌取材、企業の企画執筆・写真撮影・TV番組の撮影などに従事。業務で得た経験や知見をもとに、カメラ・写真レタッチ・動画編集・商品レビューなどの情報を発信します。

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