Text/Photo:ちゃんまさ
まずは結論
カラーマネージメントモニターは、ノートPCなどと組み合わせて使用することでデジカメ撮影した写真を正確な色で現像できる製品です。モニターは、経年劣化により購入時の性能を維持しづらい性格がありますが、定期的にキャリブレーションを行うことで狂いが生じた発色を再校正し、新品状態の性能を維持できます。初期導入コストは高額ですが、頻繁に買い換える必要がないため結果的に長期コストを抑えることができます。
カラーマネージメントモニターを推奨する理由
正確な色を表示できる
カラーマネージメントモニターは「正確な色」「正確な色域」「正確な明るさ」「正確なガンマ」で表示できる特徴があります。通常のモニターは、個人の感覚で調整する必要がありますが、人間の眼は「かなり曖昧」であり、その日の体調で色の見え方が異なります。カラーマネージメントモニターは、測色センサーを使って機械的にカラー管理するため、正確な色を安定的に維持できます。
経年劣化による色の誤差を自分で再調整できる
そもそもモニターは、メーカー調整後に出荷されるため、導入当初はある程度正確な色を表示できます。しかし、バックライトや液晶パネルは経年劣化が生じやすく、初期性能を維持し続けることが困難です。一般的なモニターは、経年劣化で狂いが生じた色を階調を保ったまま再校正できませんが、カラーマネージメントモニターは、フル階調を保ったまま自分で再校正できるため、正確な色を長期間維持できます。
モニター表示がWEB用と印刷用で切り替えられる
カラーマネージメントモニターは、WEB用と印刷用など異なる表示設定を保存し、簡単な操作で切り替えられることができます。
運用例
WEB写真のレタッチ作業
ブログやSNSに写真を掲載する時は、色域をsRGB、色温度6500K、ガンマ2.2の寒色寄りの白に画面設定してレタッチする必要があります。WEBは、sRGB表示を前提としているため、ルールと同じ環境でレタッチすることにより、より多くの人に正確な色で写真を閲覧してもらえます。
モニターの中にはAdobe RGBという鮮やかな色を表示できる製品も販売されていますが、Adobe RGBでレタッチした写真をWEBへアップロードすると、正確な色で表示されない恐れがあります。
印刷用写真のレタッチ作業
写真を印刷用にレタッチする時は、色温度を5000K付近の暖色寄りの白に設定する必要があります。WEB用の設定なまま印刷用レタッチするとモニター表示と印刷結果に誤差が生じ、モニターの表示通りに印刷できません。
製品選びのコツ
印刷・デザイン制作用と映像制作用がある
カラーマネージメントモニターは、多くのメーカーから数多くの製品が販売されているので、初心者は、どの製品を選択するかで悩みます。カラーマネージメントモニターは、大きく分けてグラフィックデザイン・印刷・写真重視型と映像重視型の2タイプあります。
写真重視のレタッチをおこなうなら24インチ前後の大きさの、デザイン印刷重視型がオススメです。WEB用と印刷用のレタッチを高精度でおこなうことができます。
動画専用や動画編集の比率が高い場合は、映像用色域を搭載し、24フレーム再生機能を搭載した映像用重視型を検討したいところです。動画編集はタイムラインを表示した編集作業になるので、27インチ以上の大型画面を購入すると作業性が向上します。
色域はsRGBまたはAdobe RGBか?
写真重視のレタッチを行う場合、表示できる色域が重視されることがあります。WEB用写真をレタッチする時は、sRGBが表示できれば何ら問題ありません。WEB用写真をAdobe RGB環境でレタッチしても、世の中の人は正確な色で表示できないからです。
Adobe RGB対応モニターが本領を発揮できるのは、高色域プリンターで印刷する場合に限定されます。しかし、Adobe RGBすべてをの色を印刷できるプリンターや印刷機は皆無に等しく、過度なレタッチにより彩度が高くなると、モニターの表示通りに印刷できない事態に陥ります。
Adobe RGBは扱いが難しい
SNSが普及し、写真撮影しても印刷しない人が急増中です。印刷頻度が極端に低いことが想定される場合、高価なAdobe RGB対応モニターは不要です。カラーマネージメントモニターの目的は、派手な色で表示することではなく、正確な色で表示や印刷ができることです。色域がsRGBに限定されたとしても、実際に印刷するとまったく問題ありません。Adobe RGBモニターは、初心者に扱いが難しい上級者(業務)向けモニターといえます。
測色センサーが必要
カラーマネージメントモニターは、モニタ本体のほか、キャリブレーション作業で使用する測色センサーが必要です。ただし、表示品質は、測色センサーの性能が品質を決定するので安価すぎる製品は避けたほうが無難です。
内蔵式センサーは他のモニターで使用できない
測色センサーは、モニター内蔵型と汎用別体式があります。モニター内蔵型は価格が高価ですが、安心確実を求めるなら、測色センサー内蔵式の製品を選択するのが品質や対応で苦慮することなく安心です。
ただし、モニターを買い換える時は、別途測色センサーを買い足す必要があります。複数モニターをキャリブレーションするときは別体式センサーを導入したほうがメリットが大きくなるかもしれません。
業界標準はEIZO ColorEdigシリーズ
カラーマネージメントモニターは、EIZOのColorEdigシリーズが業界標準になります。印刷・デザイン・写真スタジオなどプロの現場では、高確率でEIZO製モニターが使用されています。ユーザーサポートやアフターも充実しており、電話でサポートを受けることができます。
低価格を重視するならBenQも候補に上がりますが、海外メーカーなのでサポートやアフターに弱さを感じるかもしれません。
EIZO ColorEdigでも安価に導入できる製品
EIZOのColorEdigシリーズは、写真・デザイン・印刷用のCSシリーズ、映像製作にも対応したCGシリーズがあります。その中で、おもにデジタル写真の現像を楽しむユーザーにお勧めしたいモデルがColorEdig CS2400Rになります。
総額7万円台でカラマネ環境が実現! ColorEdig CS2400R
写真・印刷・デザインに適したハードウェアキャリブレーション搭載モニター
液晶パネル | IPS (アンチグレア) |
バックライト | LED |
サイズ | 24.1型 (61.1 cm) |
推奨解像度 | 1920 x 1200 (アスペクト比16:10) |
輝度 | 300 cd/m2 |
コントラスト比 | 1000:1 |
色域 | sRGBカバー率100% |
入力信号 | USB Type-C (DisplayPort Alt Mode, HDCP 2.3), DisplayPort (HDCP 2.3), HDMI (Deep Color, HDCP 2.3) |
消費電力 | 標準:15 W 最大:134W(最大値はPCへの70W給電含む) |
表示モード | User, sRGB, Calibration (CAL) |
カラーメネージメントソフト | ColorNavigator 7 |
測色センサー | 別売り測色センサーを使用 |
保証期間 | 5年間 無輝点保証6ヶ月 |
ローコストカラーマネージメントモニターとして絶大な人気を誇ったColorEdig CS2410ですが、2023年春、後継機種としてColorEdig CS2400Rが発売されました。
ColorEdig CS2400Rは、sRGB色域を100%カバーする24.1型モニターです。測色センサーは別売りになりますが、その分本体価格(メーカー直販価格:59,850円)と安価に抑えられています。ただし、コストを抑えるため、旧モデルのCS2410同様、販売ルートはEIZOダイレクトに限定されます。そのため、家電量販店やネット通販で購入することはできません。
旧型ColorEdig CS2410と新型CS2400Rの大きな違いは、映像入力ポートにUSB-Cポートが搭載されたことです。その結果、ノートPCとColorEdig CS2400RはUSB-Cケーブル1本で接続(70W給電可能)でき、大画面かつ正確なカラー環境で作業できます。
色域はsRGB100%ですが、フジカラー銀塩プリント・フロンティアは色域にsRGB(色温度5000Kの特殊運用)を採用するため、Adobe RGB対応モニターを導入してもポテンシャルが発揮できません。また、Adobe RGBとプリンタ色域の不一致により、正確な色で出力できない可能性も秘めています。
ColorEdig CS2400Rは測色センサーが別売りです。測色センサーは2~3万円の製品から20万円を超えるものまでさまざまな製品が販売されていますが、一番懸念するのは、高価なモニターを買ったため安価な測色センサーしか購入できなかった場合です。高性能モニターの性能を100%引き出すことができないからです。
性能を追求するとi1PRO3センサーがベストな選択になりますが、価格が20万円以上と高価なので趣味用途で気軽に購入できる製品ではありません。そこで、i1PRO3センサーと同一タイプの分光光度計タイプを購入すれば、ColorEdig CS2400Rの性能をフルに引き出すことができます。
オススメ運用
ColorEdig CS2400R+ColorChecker Studio
分光光度計で高精度調整を実現・プリンタプロファイルも作成できる!
総額:148,000円前後
ColorEdig CS2400R | ColorNavigator7でハードウェアキャリブレーション可能 ※ColorChecker Studio付属ソフトは使用しない。 |
ノートPC その他のモニター |
ColorChecker Studio付属ソフトでソフトウェアキャリブレーション可能 |
独自プリンタプロファイル作成 | ColorChecker Studio付属ソフトで独自プロファイル作成可能 ※Macは組み合わせるプリンタによって作成できない場合あり。 |
ColorChecker Studioは、i1PRO3センサーと同タイプの分光光度計として最安価な製品になります。ColorEdig CS2400RとColorChecker StudioRとの相性も良く、EIZO純正カラーマネージメントソフトColorNavigator7に対応しているので、ColorEdig CS2400Rを高精度でハードウェアキャリブレーションできます。また、ColorChecker Studioは、EIZO以外のメーカーのモニターをソフトウェアキャリブレーションできるため、ノートPCのモニターもソフトウェアレベルでキャリブレートできます。
ColorChecker Studioは、反射原稿(印刷物)の測色も可能です。そのため、ColorChecker Studioに付属するソフトウェアを使い、プリンタプロファイルを独自作成することができます。運用方法としては、純正以外の用紙を使用する時や、プリントと印刷物の色を一致したい時、フジカラーの銀塩プリント「フロンティア」のオリジナルプロファイルも作成できるので写真の楽しみが格段に増えます。
ColorEdig CS2400R+EIZO EX4センサー
CS2400R+EIZO EX4センサーセットなら77,500円から導入できる!
総額:77,500円 CS2400R+EX4センサーセット ※EIZOダイレクト価格
総額:84,920円 CS2400R+EX4センサー+遮光フードセット ※EIZOダイレクト価格
ColorEdig CS2400R | ColorNavigator7でハードウェアキャリブレーション可能 |
ノートPC その他のモニター |
不可 |
独自プリンタプロファイル作成 | 不可 |
ColorEdig CS2400RはEIZOダイレクト限定製品ですが、コストを抑えたい時はモニターと純正測色センサーがセットになった「ColorEdig CS2400R+EIZO EX4センサーセット」を購入すると、単品購入するより2,250円お得になります。また「ColorEdig CS2400R+EIZO EX4センサー・遮光フードセット」は、単品購入するより15,410円リーズナブルに購入できます。
ただし、EIZO EX4センサーはEIZOモニター専用品のため他メーカーのモニターで使用できません。また、モニター専用センサーのためプリンタープロファイルは作成できません。
ColorEdig CS2400R+Datacolor SpyderX Pro
CS2400R+Datacolor Spyder X ProならノートPCの画面もキャリブレートできる
総額:85,000円前後
ColorEdig CS2400R | ColorNavigator7でハードウェアキャリブレーション可能 ※Datacolor Spyder X Pro付属ソフトは使用しない。 |
ノートPC その他のモニター |
Datacolor Spyder X Pro付属ソフトでソフトウェアキャリブレーション可能 |
独自プリンタプロファイル作成 | 不可 |
測色センサーEIZO EX4を導入した場合、キャリブレーションできるモニターはColorEdig対応機種に限定されます。そのため、ノートPCなどのモニターはキャリブレートできません。そこで、ColorNavigator7に対応するDatacolor Spyder X Proを購入することで、ノートPCや他のモニターをソフトウェアキャリブレーションできるようになります。
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