今回からは実践編です。ひこーき写真の大敵といわれる「逆光写真」の量産理由と、解決方法について解説します。測光システムを理解して、自分流の「問題解決方法」を見つけてください!
●空の面積を考慮して露出補正を活用する
それでは「ひこ〜き写真の教室」、5回目の講習を始めます!
飛行機が真っ暗っ!
【1】露出にバラツキが出る要因は?
飛行機を撮影すると「露出にばらつきがあること」に気づきませんか? 太陽の向きと空の色が露出に悪さをすることがあります。
カメラの測光システムは、驚くほど高性能に進化しました。しかし、飛行機写真の場合、太陽光溢れる空と機体の影の明るさを比較すると明暗差があり、明暗部のどちらに露出を合わせるかで悩みます。空に対して飛行機の面積の割合が小さいと、カメラは空に露出を合わせようと制御します。その結果、機体は真っ暗なアンダー傾向になります。
これらの事象は、測光システムの仕組みを理解することで、ある程度予想できます。逆光写真を防止するための方法を考えてみましょう。
【2】適正露出は「グレー」に写ることが基本
カメラの露出は、被写体の平均的な反射率が18%として定められています。おおよその被写体は「反射率18%が平均値である」という理論を根拠にシャッタースピードと絞り値を算出しています。人間の肌の色は反射率18%に近似しており、順光ならばオート撮影に任せても自然な明るさで撮影できます。
ところが、白や黒などの極端な色(明度)は、平均値な反射率とは大きく異なるため、正確に測光できません。
実際に測光の仕組みを飛行機撮影に当てはめてみましょう。飛行機撮影の曇天や逆光は、白い空が画角全体の広範囲を占める状態を指します。カメラの測光システムは、白い空をメインの被写と認識し、18%の反射(=灰色)になるように露光します。白い空は狙い通りのグレーになりますが、その影響で機体は暗くなる、というわけです。
【2】測光方法はおもに3通り
マルチパターン測光の特性
現在主流の測光パターンです。ファインダー全体をエリアごとに分割して各エリアごとに測光。各エリアごとに計測された数値をもとに、明るい部分と暗い部分、被写体の大きさなどバランスをとった露出になります。高度な露出モードといえます。
デメリット
順光の露出は比較的適正な明るさに仕上がりますが、機械制御が介入するため予測しづらい一面があります。また、明部から暗部まで考慮した露出になるため、逆光撮影時などに本来は空を完全に飛ばしてしまっても構わないのに雲の階調を残すとするため、結果的に被写体が暗くなることがあります。
オート撮影との相性
相性は良いと思います。
中央重点測光の特性
ファインダー中央部を重視した測光して、おもに測光エリア内の明るさが適正露出になるように全体の明るさを調整します。もっともスタンダードで測光モードで、慣れると露出クセをつかみやすくなります。
デメリット
逆光撮影時に被写体が小さい場合、どうしても白い空の面積が大きくなるため露出アンダーになりやすくなります。
オート撮影との相性
相性は良いと思いますが、フレームに対して機体がはみ出るような時はオーバー傾向になりやすい印象です。
スポット測光の特性
スポット測光サークルのみを測光します。測光エリア内の明るさが適正露出になるように制御されます。
デメリット
白色や黒色をグレーに写るため、白い機体を撮影する時はグレーになることを見越して露出補正する必要があります。また、フレーミングが定まらず測光サークルが機体から外れると、白い空に露出が合うため高度な撮影技術を要します。
オート撮影との相性
相性は良くありません。真っ暗だったり真っ白だったり明るさが安定しません。マニュアル露出前提の設定と言えそうです。
【4】被写体が小さいと逆光の影響をうけやすい
フレームサイズに対して被写体にサイズが小さくなるほど空の影響が大きくなり、被写体が暗くなりがちです。超望遠レンズで大きく撮影できれば影響は少ないですが、焦点距離が足りない場合は要注意ですね。
【5】天気別の機体が暗く写りやすい度チェック
<晴天>
晴天・順光の場合→機体が暗くなりづらい(影響:小) 危険度:☆☆☆☆★
晴天・逆光の場合→機体が暗くなりやすい(影響:大) 危険度:☆★★★★
<うす曇>
うす曇・順光の場合→機体が若干暗くなりやすい(影響:中) 危険度:☆☆★★★
うす曇・逆光の場合→機体が暗くなりやすい(影響:大) 危険度:★★★★★
<雨天>
雨天・順光の場合→機体が若干暗くなりやすい(影響:中) 危険度:☆☆★★★
雨天・逆光の場合→機体が若干暗くなりやすい(影響:中) 危険度:☆☆★★★
逆光撮影時は露出補正を積極活用!
順光撮影が鉄則
飛行機撮影の基本は順光撮影です。順光で撮影できるように立ち位置を工夫することで逆光による機体の黒つぶれは回避できます。
露出補正を活用する
まずはDレンジ拡張機能をOFFにします。
立ち位置があきらかな「逆光」だと感じたら、露出補正を+側に設定して、露出が明るくなるように補正します。露出補正する場合は「中央部重点測光」との相性が良いと思います。1/3段から1段を目安に+側に補正して、撮影データを確認しながら補正値を決定します。
測光モードを「マルチパターン測光」に設定していると、+側に1段以上補正しても思った以上に機体が明るくならない時があります。カメラが、空の階調を完全に飛ばなさにように反抗していることが予想されます。このような状況が現れたら「中央部重点測光」に変更しましょう。
Dレンジ拡張機能は?
最近のカメラには、Dレンジ拡張機能が搭載されています。明るい部分も暗い部分も階調は残しつつ、被写体を明るく写す機能です。初期設定でオートになっているケースが多いですね。
私個人の考え方ですが、飛行機の逆光写真は、空が真っ白に飛んでしまっても問題ないと思っています。そういう意味では、Dレンジ拡張機能は、白い雲の階調も残すことになるので、私の意図とコンセプトが合致しません。というわけで、Dレンジ拡張機能はOFFにして露出補正のみで明るさを調整しています。
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