フルサイズミラーレスの市場を開拓し、一眼レフを駆逐する勢いのソニーα7iii。
国産デジカメメーカーの2トップであるキヤノンとニコンがαの独走を阻止すべく「刺客」を送り込むが、その勢いは衰えようとしない。
発売から2年が経過した今でも売れている状況です。
筆者は「写真撮影と動画撮影を1台で完結できる」という理由でソニーα7iiiを購入しました。仕事で酷使している状態です。
というわけで、一人の現役ユーザーの「個人的視点」でソニーα7iiiを紹介します。
これから購入される方のお役に立てれば幸いです。
カメラ各部の作りが第3世代でようやくビッグ2と肩を並べる
筆者は、動画目的でソニー機を購入しました。α遍歴は、α6400、α6500、α7iiiになります。
マウント移した当時、ソニーフルサイズ機はα7iiが最新でした。すでに像面位相差が採用されていましたが、AF性能や各部の作りこみに満足できず購入するに至りませんでした。
α9の登場によりαは第3世代に突入しました。画像処理エンジンの性能が劇的に向上し、ミラーレス一眼のAFが一眼レフ機と肩を並べるレベルに到達しました。
しかし、α9はフラッグシップ機ではなく高速連写機です。動画撮影のポテンシャルはそれほど高くありませんでした。
続いてα7Riiiが4240万画素という高画素機で登場。しかし、位相差AFが作動する条件が「F8まで」という条件があり、購入を見送り。
そして、第3世代の最後発としてα7iiiが登場。
画素数は2420万画素で驚くようなスペックではありません。
が、しかし、実用域な画素数と優れた高感度特性。抜群のコストパフォーマンス。
動画性能はα9に搭載されなかったピクチャープロファイルが搭載され、位相差AFもF11まで作動します。これらのスペックを期待してα7iiiを発売日に購入しました。
外観&実写レビュー
ソニーαの系譜は、第1世代から第4世代まで共通デザインに見えますが、細部をチェックすると全く別物というほど進化を遂げています。操作系については、ソニー特有の「扱いづらさ」が残っていますが「許容範囲に収まった感」があります。
操作性|カスタムボタンが増設され道具としての使いやすさが大幅向上
操作系で特筆すべきは、カスタムボタンが増設されたこと。第2世代までのモデルは、頻繁にメニュー画面に入る必要がありましたが、α7iiiはカスタムボタンの操作だけでテンポよく撮影きるようになりました。
RECボタンが実用的な位置に配置されたことも評価すべきボイントです。第2世代までは理解に苦しむ位置に配置されていましたから。
細かな点では、マウント部分の固定が、4点止めから6点止めに補強。地味な点ですが信頼性やボディ剛性の向上に寄与しているハズです。
液晶モニター|コストダウンで画素数控えめ、バリアングルは非採用
液晶モニターは、第3世代の全モデルに共通する「チルト式」を採用。
筆者は、動画撮影用にパナソニック・ルミックスGH3を使用した経験があり、バリアングルの使いやすさを体験済みです。バリアングルはカメラ運搬時に液晶モニターを裏返して収納できるので、液晶モニターに傷をつける恐れがなく重宝しました。
α7iiiの液晶画面はごく一般的なチルト式です。ローアングルで上むき、ハイアングルで下向きに調整できるので、運用上で困ることはありません。Youtubeなどの自撮り中心に運用するなら、扱いづらさを感じるかもしれませんね。
チルト式の弱点は、液晶画面が常時露出すること。カメラストラップを肩にかけた状態で移動すると液晶モニターがベルトに接触し、コーティングを傷つける恐れがあります。
現役ユーザーからのアドバイスするなら、ストラップの長さ調整と液晶保護フィルムは必須ですよ。
液晶モニターの画素数は、α7Riiiが144万画素に対してα7iiiは約92万画素。ファインダーもα7RIIIが約368万画素に対してα7IIIは約235万画素。
明らかにコストダウンが図られています。
しかし、マニュアル撮影で使用するなら気になるかもしれませんが、ミラーレスカメラには「ピント拡大機能」が付いているので致命傷には至りません。
メモリカード|上下逆の2スロットル仕様が馴染めない
メモリカードはSDカードのダブルスロットル仕様です。同時記録やリレー記録に対応します。
問題は「スロット1が下側、スロット2が上側」という謎仕様です。SDカードの向きも裏側で挿入するため、未だ馴染めない感があります。
この点は第4世代で改善されましたが、これから第3世代のモデルを購入される方は覚悟が必要ですね。
α7iiiといえばSDカードが認識しなくなるトラブルが多発した時期がありましたよね。筆者も2度ほど経験しました。
このトラブルは、ファームアップの更新により改善されたのでご安心を。
画質|2420万画素は商業印刷でA3まで対応できるサイズなので問題なし
画質の印象は、α全般に共通する「素材志向」の仕上がりです。JPEG撮って出しの状態では眠い印象を受けるかもしれません。
撮影後のレタッチは必須です。レタッチ耐性は高いように思います。JPEG撮って出しを重視するなら、FUJIやCANONを選択した方が幸せになれるかも知れませんよ。
特筆すべきは高感度耐性の良さ。ISO6400が実用的に使用できます。
画素数的にはα9と同じですが、高感度特性は明らかにα7IIIが勝ります。
発色については、α共通の「緑の発色」に特徴があり、好き嫌いがはっきり出るかもしれません。
AF性能|位相差AFがF11まで動作するのでテレコン付きでも使用できる
AF性能はα9がトップ性能であることは紛れもない事実です。
しかし、α7iiiも負けず劣らず高速AFが可能です。α9と同じ撮像エリア全体の約93%をカバーする693点像面位相差AFセンサー(コントラストAF枠が425点)が搭載されているからです。
位相差AFがF11まで作動するので、SEL100400GMに1.4倍テレコンを装着してもAFが動作します。α7Riiiは動作動作しないので望遠レンズを使用するならアドバンテージになります。
ただし、αのオートフォーカスはα9を除き「実絞り」で測距します。一眼レフは開放測距です。
そのため暗所で絞りを絞るとAF性能が低下する弱点があります。暗所のAF性能はキヤノンやニコンの一眼レフ機と比較すると明らかに劣ります。
瞳認識|瞳認識は兵器のような追従性でロックオン
リアルタイム瞳AFは、恐ろしいレスポンスで追従します。人物撮影される方には武器になるはずです。
しかし、この機能は使いづらいシーンもあります。人混みを背景に撮影する時に、背景の人物にピントを合わせようとするからです。背景に等身大ポスターが視界に入る時にも反応します。
常時ONではなく、OFFにできるようにカスタム設定しないと困る時があります。
バッテリー|初心者の方なら余裕で1日使えるスタミナ使用
第2世代までにαは、バッテリー容量は1020mAhと少ないNP-FW50を使用していました。ミラーレスカメラは電力を大量に消費するため、バッテリーの持ちが最悪でした。私は1日4本使用した経験があります。
その点、α7iiiはNP-FZ100バッテリーに変更され、容量が2280mAhまで飛躍的に増量されました。
一気に2倍に増量されたワケですから、写真撮影だけなら1日持ってくれます。ソニーでは「ミラーレスカメラとして業界最大710枚」と謳っています。動画撮影時でも2本あれば1日撮影できますね。
注意点は、α7iiiはコストダウンの影響で充電器が別売りです。カメラ本体で充電できますが不自由さを感じます。
安価な中華製でも構いませんので別途用意されることをお勧めします。
手ぶれ補正|必要十分な性能ですが過度の期待は禁物
α7IIIはフルサイズセンサーを搭載しながらも、5段分の光学式5軸ボディ内手ブレ補を搭載しています。必要十分な性能ですが、オリンパスやパナソニックなどのマイクロフォーサーズ機と比較すると劣る印象です。
ボディー内手ぶれ補正は、手ぶれ補正機能を搭載しない純正レンズはもちろん、マウントアダプター経由で社外レンズを装着しても動作します。地味に嬉しい機能です。
連写性能|AF&AE追従で最高10コマの高速連写
連続撮影は、AF/AE追随高速連写で最高約10コマ(Hi+)、最大177枚の連写持続性能を実現。ただし、ビューファインダーに映し出される映像に違和感を感じるかも知れません。運用上では8コマ(Hi)が実用的ですね。
AF/AE追随高速連写中のAF追尾能力はF9よりも劣る印象です。連写を多用しなければ高確率でピントが合致します。
残念な点はサイレント撮影時のコマ数が少ないこと。パナソニックなどは電子シャーター撮影時は、ビデオカメラ並みのフレームレートで撮影できますが、α7iiiはメカシャッターよりも遅くなります。
細かな点では、α7iiiはデフォルト状態で「電子先幕シャッター」が作動します。通常モードに変更すると、1回のシャッターで「カシャ、カシャ」と2回切れるので違和感を感じます。
注意点
レンズやアクセサリーが高額
ソニーα全般に該当するのですが、レンズやアクセサリーが高額な印象です。気軽に飛びつくと思わぬ出費に驚くかもしれません。
購入予定の機材を算出し、システム総額を知っておくことが重要です。コストを重視するならキヤノンで揃えた方が良いと思います。
それでも「αを購入したい」という信者予備軍の方は、ソニー独特の購入方法を知っておくことが重要です。
ソニーは直営店舗のソニーストアがあります。アップルのアップルストアと同じですね。
「でも直営店って高いんでしょ!」と思われますよね。実はソニーストアには、購入金額に応じて割引率が向上するシステムが存在します。また、メーカー保証が3年に延長される特典もあります。
お得に購入したい人のために「ソニーストアの記事」を執筆しました。ご興味がある方は、お立ち寄りください。
修理費用が高額な傾向
ソニーαは修理代が高額な傾向です。
「キヤノン、ニコン、フジフィルム、オリンパス」などのカメラメーカーは、修理代が安価な傾向ですが「ソニー、パナソニック」などの家電系メーカーは修理代が高額です。
幸いソニーαの修理は短期間で直してくれる口コミも多いです。筆者は過去にハンディーカムをお盆期間中に依頼しましたが、すぐに修理が完了して驚きました。
修理代が高額な点は、ソンーストアで購入するとリスクを低減できるかもしれません。
「ソニーストアの記事」に記載したので興味がある方は、お立ち寄りください。
まとめ
ソニーαは「ただいま絶賛進化中」のカメラです。母体が家電系メーカーなので、進化が早く新製品が半年で型遅れになった実績があります。また、高額モデルの性能を汎用モデルが凌駕する「下克上」も普通にあります。
それでもソニーαは、ワクワクを感じさせてくれるシステムです。