開放F値2.8通しのソニーEマウント(フルサイズ)レンズ「タムロンA036」が3年の月日を経て、新型「A063」へ進化した。今回のモデルチェンジは、価格維持のための小変更ではなく、光学性能やAFモーターを一新し、性能後劇的進化を実現した。もはや旧型ユーザーは涙目!? 広角端が24mmと28mmでは使い勝手が大きく異なるが、28mmスタートさえ受け入れることができれば魅力的な選択になりそうな1本です!
スペック比較表
画像引用:タムロン
モデル名 | A063(新型) | A036(旧型) |
焦点距離 | 28-75mm | 28-75mm |
明るさ | F2.8 | F2.8 |
レンズ構成 | 15群17枚 | 12群15枚 |
ガラス素材 | ガラスモールド非球面レンズ2枚 LDレンズ2枚 |
ガラスモールド非球面レンズ1枚 LDレンズ1枚 複合非球面レンズ2枚 XLDレンズ1枚 |
最短撮影距離 | 0.18m (WIDE) / 0.38m (TELE) | 0.19m (WIDE) / 0.39m (TELE) |
最大撮影倍率 | 1:2.7 (WIDE) / 1:4.1 (TELE) | 1:2.9 (WIDE) / 1:4 (TELE) |
フィルター径 | φ67mm | Φ67mm |
最大径 | φ75.8mm | Φ73mm |
長さ(マウント面) | 117.6mm | 117.8mm |
質量 | 540g | 550g |
モーター | リニアモーターフォーカス機構VXD | ステッピングモーターユニットRXD |
プリセットボタン | あり | なし |
専用ソフトウェア | タムロンレンズユーティリティー 対応 |
タムロンレンズユーティリティー 非対応 |
本体外観仕上げ | 塗装仕上げ | 無塗装仕上げ |
絞り羽根 | 9枚 (円形絞り) ※2絞り分まで | 9枚(円形絞り) ※2絞り分まで |
最小絞り | F22 | F22 |
標準付属品 | 花型フード、レンズキャップ | 花型フード、レンズキャップ |
希望小売価格 | 123,200円(税込) | 110,000円 (税込) |
発売日 | 2021年10月28日 | 2018年5月24日 |
性能を比較して優れる方を赤文字で表示しました。
両製品のスペックを比較すると、圧倒的にA063(新型)が優っていることが一目瞭然です。旧型から劣る部分は「鏡筒部分の最大径」と「価格」の2点のみ。新型は、劇的な性能向上を図りながらもフィルターサイズφ67mmを維持(純正だとφ82mmの製品あり)している点は、技術陣の頑張りといえそうです。
一新された光学系
画像引用:タムロン
A063(新型)の仕様で特筆すべきは一新された光学系の採用。大胆な仕様変更をおこなうことで画質が大幅に向上しました。両レンズのMTF曲線を掲載しましたが、違いは明確です。
画像引用:タムロン
公開されたMTF曲線をチェックすると、細かな部分の解像度を示す30本/mm(高周波領域)の数値が大幅に向上しました。とくに望遠端の75mmの描写は、絞り開放値から単焦点レンズに迫る素晴らしい数値を叩き出しています。望遠端の描写が甘くなると、結構イラッとするので正常進化と言えそうです。
画像引用:タムロン
広角端の28mmにおいても、30/本mm領域におい、周辺部まで解像していることがグラフから読み取れます。旧型はAPS-Cサイズより端の領域で解像度が一気に低下するのに対し、新型はフレフレームの端まで解像しています。
細かな点では、非球面レンズが旧型の3枚から新型は2枚になりました。非球面レンズは、周辺部の解像向上や収差低減に効果を発揮するものの、旧型のボケは「うるさい」と評判が良くありません。その要因のひとつである非球面レンズが2枚に減らせたことは歓迎すべきではないでしょうか。
リニアモーター採用で旧型比速度2倍
画像引用:タムロン
A036(旧型)は、駆動モーターにステッピングモーターユニットを採用し、正確なフォーカスを実現していました。しかし、スピードについては若干劣り「AFが迷いやすい」と評価は良くありませんでした。
A063(新型)は、ネガな部分を解消するため高級レンズに用いられるリニアモーターを採用。AF速度は、A036(旧型)に比べて2倍のスピードアップを実現しました。また、動体へのフォーカス追従性も向上し、AF-Cモードや瞳AFの撮影においてもポテンシャルの向上を体感できそうです。
フォーカス時の作動音は、旧型&新型ともに静粛性に優れるため、動画撮影時の撮影にも最適です。
高品位な鏡筒塗装仕上げ
画像引用:タムロン
A036(旧型)の外観は、プラスチック製の無塗装仕上げのため、質感においてはチープな印象をぬぐえませんでした。実際に使用すると爪が擦れただけで傷が付き、どれだけ丁寧に扱ってもキズから防ぐことができませんでした。その結果、レンズ売却時に査定価格が悪くなりがちでした。
その反省を踏まえ、A063(新型)はコストカット一辺倒ではなく外観の塗装仕上げを採用。鏡筒デザインも洗練され、高級感がぐっと増した印象です。
また、ピントリングやズームリング部の外径がひと回り大きいため、収納時に鏡筒と干渉することが軽減され、傷が付きづらくなると思われます。機能性を兼ね備えた優れたデザインてすね。
プリセットボタン採用
画像引用:タムロン
A036(旧型)は、コストカットが最優先されたため、レンズ側のスイッチ類はすべて省略されました。その結果、フォーカスセットボタンが使えなかったり、AF切り替えをカメラ側で変更する必要があり、スピードが要求される現場において「扱い辛いレンズ」と評判はあまり芳しくありませんでした。
A063(新型)は、AF切り替えボタンは相変わらず装着されていませんが、フォーカスセットボタンを採用。このボタンを活用し、AF切り替えを設定(タムロンレンズユーティリティーが必要)できるようになりました。ハードな現場においては完璧な仕様ではありませんが、扱いやすさは向上しました。
USB-Cポート設置
画像引用:タムロン
A063(新型)は、タムロンの新機能「タムロンレンズユーティリティー」が搭載されました。レンズ鏡筒側面にUSB-Cポートが設置され、専用ケーブル(別売)とPCを接続することにより、専用ソフトウエアを用いて各種設定できます。
おもなタムロンレンズユーティリティー機能(抜粋)
●フォーカスプリセット(レンズ専用機能)
●AF/MF切り替え(レンズ専用機能)
●カメラボディ側機能割り当て ※カメラ側の設定が有効になる設定
●フォーカスリング回転方向の変更
●MF時のフォーカス感度
●ファームウェアのアップデート
ズームリングの回転方向が純正レンズと同じ
タムロン製ソニーEマウント用交換レンズ全般に言えることですが、スームリングの回転方向がソニー純正品と同じ方向(向かって右周り)に統一されています。A063(新型)についても同様です。
競合製品のシグマ28−75 F2.8 DG DN Contemporary(C021)は、ズームリンクの回転方向がソニー純正品と逆(向かって左周り)の仕様になっています。シビアな現場においては馴染めないカメラマンもいるので、
妥協点
高速連写性能
ソニーEマウントレンズのライセンス契約の都合上、α1やα9装着時の高速連写は制限されそうな予感です。ただし、15コマ秒程度の連写ができれば「実用上はまったく問題ない」というのが実感です。
28mmスタート
連写速度よりも「28mmスタート」が受け入れられるかの是非になります。28mmは「あとちょっと引けたら・・・」と感じることが多い画角です。24mmとの差は数値以上に大きいと思います。
近接撮影時の画質
寄れることをアピールしたレンズですが、その画質は「おまけ程度」と思った方が無難です。マクロレンズの描写と比較すると、画質は明らかに劣ります。
レンズ内手ぶれ補正は未搭載
手ぶれ補正機能は搭載していません。カメラ内手ぶれ補正のみで防振します。ボディ手ぶれ補正機能を搭載していないカメラに装着すると、手ぶれ補正機能が一切動作しないので注意が必要です。
カメラ内手ぶれ補正機能を搭載していないカメラ
●α6400
●α6100
●VLOGCAM ZVE10 など
まとめ
A063(新型)は、解像度を劇的進化してリニューアルされた印象です。全モデルのチープな鏡筒も、塗装仕上げを採用することにより質感が向上しました。旧モデルの望遠端で描写が甘くなる光学特性が改善され、開放からシャープな描写が得られる点は、購入の決め手になりそうです。鏡筒も傷が付くづらく改善されたので、売却時の価格低下も抑えられそうです。
タムロンの描写はか柔らかい印象です。カリカリの描写を好むならシグマの購入を検討しても良いかもしれませんね。
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