ひこーき写真を撮影する上で欠かせない装備のひとつが航空無線の受信機。行きつけの空港周波数を登録しておけば、ランウェイの確認や飛行機の種類を事前に知ることができます。リクエストハイレートクライムも事前に察知できるので、撮影場所を先回りして豪快な離陸シーンが撮影できます!
●航空無線を聞いてワンウェイ確認や撮影場所を先回りして確実に撮影する
それでは「ひこ〜き写真の教室」、7回目の講習を始めます!
エアバンド受信に資格は必要か?
資格不要 交信内容を他人に漏らさなければOK
エアバンドとは、航空機と管制塔の無線通信を指します。「業務的な無線を聞くには資格がいるんじゃないの?」とか「法律的に大丈夫?」と疑問を抱く人も多いと思います。
電波法第59条にて
「特定の相手方に対して行われる無線通信を傍受して、その存在若しくは内容を漏らし、又はこれを窃用してはならない」
と通信の秘密について定められています。
要約すると「交信内容を他人に漏らしたりするのはNGだけれど写真撮影のため無線を傍受するのは問題ない」ということになります。ルールを厳守すれば、まったく問題ありませんので、これを機会にエアバンドを導入してみるのはいかがでしょうか?
エアバンド受信機はひこ〜き撮影の必須装備!
ひこ〜き写真のカメラマンは、無線を趣味にする人からすれば「初心者」です。そもそも、カメラやレンズにお金がかかるので、最低限の知識と装備を有することが目標になります。
エアバンド受信機はカメラ&レンズと同様に、メーカー・価格・性能など様々な製品が販売されています。マニアックな製品を購入すると「沼」にハマり、想定外の出費の恐れがあるので「こだわりすぎる」のは得策ではありません。
オススメの製品は、多くの仲間が愛用している製品を購入すること。操作がわからなくなった時、ベテランの方に使い方を教えてもらえる確率が高いからです。オススメの商品はアイコム「IC-R6」の一択です。価格もリーズナブルな上、スキャン速度が速くて周波数を1300個登録できるので、飛行機撮影用の装備としては十分すぎるレベルです。
高性能アンテナ交換で感度アップ
アイコム「IC-R6」には、日本各地の航空無線をあらかじめインプットしたエアバンドスペシャルが販売されています。初心者の方は周波数登録済みの製品を購入したくなりますが、実際の運用では「全消去」の可能性が高くなります。
エアバンドスペシャルや改造版の購入に予算を割くぐらいなら、高性能アンテナの購入をオススメします。純正アンテナは、広範囲のバンドを受信するため感度がイマイチ。管制塔と飛行中の交信は高出力のため聞き取りやすいですが、管制塔と地上を交信するグランドは、出力が弱いため聞きづらくなります。
ひこ〜き写真の撮影には、管制塔と地上の交信を聞くことで「離陸する機体、離陸方向、ハイレートクライムの有無など」を事前に知ることができるので、高性能アンテナの購入は必須なのです。
周波数を調べる方法
エアバンドの周波数は、各空港ごとにバラバラです。まずは、ひこ〜き撮影のホーム空港の周波数を知ることから始まります。ベテランの方ならネットで収拾できますが、初心者の方には敷居が高いかもしれません。
初心者は「航空無線の専門書籍」が発売されているので1冊購入しましょう。各空港の周波数をはじめ、機体のコールサインや航空無線の基礎知識も丁寧に解説されているので役立ちます。
購入するものリスト
●アイコム IC-R6本体
●エアバンド対応高性能アンテナ
●2021年版エアバンド専門書籍(付属のエアバンドデータブックが大活躍!)
●モノラルのイヤホン(1m)
●エネループ(単3 2本)
必要なアイテムは上記4点。私は受信機、アンテナ、専門書籍はアマゾンにて購入。モノラルのイヤホンはダイソーで購入しました。エネループ(単3・2本)で、おおよそ2日間連続駆動できます。
アイコム IC-R6の設定方法
勇気を出してオールリセット!
とても勇気がいる行動ですが、アイコムIC-R6を購入したらメモリーをオールクリアします。「周波数が消えてしまってもったいない」と思うかもしれませんが、そもそも撮影に出かける空港は数カ所のはず。プリセットされた周波数も古くて使い物にならないものあるので、最新データに登録し直す方が無難です。
ホームの空港に特化することで受信機が使いやすくなります。
●オールリセットのやり方
アイコムIC-R6 取扱説明書 | |
10 困ったときは ■リセットする |
106ページ |
1、電源をOFF
2、【FUNC】と【V/M】を押しながら【電源】を長押しします。液晶画面に《CLEAR》と表示されたらオールリセット完了です。
※出荷時にプリセットされたメモリーチャンネルは全消去されます。復元できません。
周波数を再登録
小松飛行場を例に周波数を登録する方法を紹介します。
私が登録しているのは、飛行場管制のTWR(タワー)が304.8と118.25、GND(グラウド)が275.80と121.70の合計4つです。
●メモリーチャンネルに登録する
アイコムIC-R6 取扱説明書 | |
5 メモリーを使う ■メモリーチャンネルに登録する |
37ページ(一部22ページ) |
▶︎ 1つ目の周波数(304.8)を登録する
1、【MODE】を短く押して液晶画面に《AM》を表示。
2、【V/M】を短く押して液晶画面に《VFO》モードを選択。 ※MR表示なしの状態
3、【DIAL】ツマミを回転させて受信する周波数(304.8)に設定。
※周波数を大きく変えるときは【FUNC】を押しながら【DIAL】ツマミを回転する。
4、【V/M】を長押し(ピッ、ピーと鳴るまで)して、メモリーチャンネル表示部を点滅状態にする。
5、【DIAL】ツマミを回転させ、空きチャンネルを選択。前項でオールリセット済みなので「001」に設定。
6、【V/M】を長押し(ピッ、ピーと鳴るまで)すると周波数がメモリーチャンネルに登録され《VFO》モードに戻る。
▶︎ 2つ目の周波数(118.25)を登録する
3、【DIAL】ツマミを回転させて受信する周波数(118.25)に設定。
※周波数を大きく変えるときは【FUNC】を押しながら【DIAL】ツマミを回転する。
4、【V/M】を長押し(ピッ、ピーと鳴るまで)して、メモリーチャンネル表示部を点滅状態する。
5、【DIAL】ツマミを回転させ、空きチャンネルを選択。「002」に設定。
6、【V/M】を長押し(ピッ、ピーと鳴るまで)すると周波数がメモリーチャンネルに登録され《VFO》モードに戻る。
▶︎ 3つ目の周波数(275.80)を登録する
3、【DIAL】ツマミを回転させて受信する周波数(275.80)に設定。
※周波数を大きく変えるときは【FUNC】を押しながら【DIAL】ツマミを回転する。
4、【V/M】を長押し(ピッ、ピーと鳴るまで)して、メモリーチャンネル表示部を点滅状態する。
5、【DIAL】ツマミを回転させ、空きチャンネルを選択。「003」に設定。
6、【V/M】を長押し(ピッ、ピーと鳴るまで)すると周波数がメモリーチャンネルに登録され《VFO》モードに戻る。
▶︎ 4つ目の周波数(121.70)を登録する
3、【DIAL】ツマミを回転させて受信する周波数(121.70)に設定。
※周波数を大きく変えるときは【FUNC】を押しながら【DIAL】ツマミを回転する。
4、【V/M】を長押し(ピッ、ピーと鳴るまで)して、メモリーチャンネル表示部を点滅状態する。
5、【DIAL】ツマミを回転させ、空きチャンネルを選択。「004」に設定。
6、【V/M】を長押し(ピッ、ピーと鳴るまで)すると周波数がメモリーチャンネルに登録され《VFO》モードに戻る。
上記作業を行うことで、メモリーチャンネルに4つの周波数が登録されました。
001チャンネル | 002チャンネル | 003チャンネル | 004チャンネル |
304.8(TWR) | 118.25(TWR) | 275.80(GND) | 121.70(GND) |
メモリーバンクを登録する
前項で小松飛行場の4つの周波数を登録しました。次は、メモリーバンク機能を使い、1グループにまとめます。IC-R6は、アルファベット(A〜Yまで)の22個のバンク(グループ)にまとめることができます。
●メモリーバンクを使う
アイコムIC-R6 取扱説明書 | |
5 メモリーを使う ■メモリーチャンネルをバンクに登録する |
47ページ(34ページ) |
メモリーバンク機能を使い、小松飛行場として登録した4つの周波数を1バンク(グループ)にまとめます。小松飛行場の周波数を「バンクA」に登録する例を紹介します。
▶︎ メモリーチャンネル001を登録する
1、【V/M】を短く押して《メモリーモード(MRが表示された状態)》にする ※場合によっては【V/M】を数回押す。
2、【DIAL】ツマミを回転させてメモリーチャンネル001を呼び出す。
3、【V/M】を長押し(ピッ、ピーと鳴るまで)して、セレクトメモリーライト状態(001とMRが点滅)にする。
4、【MODE】を短く押すと、液晶画面に《BANK》の文字が一瞬表示されます。
5、【BAND】を短く数回押して、液晶画面に《A-01》を選択。
6、【V/M】を長押し(ピッ、ピーと鳴るまで)するとバンクチャンネルA-01に001の周波数が登録されます。
▶︎ メモリーチャンネル002を登録する
1、【V/M】を短く押して《メモリーモード(MRが表示された状態)》にする。 ※場合によっては【V/M】を数回押す。
2、【DIAL】ツマミを回転させてメモリーチャンネル002を呼び出す。
3、【V/M】を長押し(ピッ、ピーと鳴るまで)して、セレクトメモリーライト状態(001とMRが点滅)にする。
4、【MODE】を短く押すと、液晶画面に《BANK》の文字が一瞬表示されます。
5、【BAND】を短く数回押して、液晶画面に《A-02》を選択。
6、【V/M】を長押し(ピッ、ピーと鳴るまで)するとバンクチャンネルA-02に002の周波数が登録されます。
▶︎ メモリーチャンネル003を登録する
1、【V/M】を短く押して《メモリーモード(MRが表示された状態)》にする。 ※場合によっては【V/M】を数回押す。
2、【DIAL】ツマミを回転させてメモリーチャンネル003を呼び出す。
3、【V/M】を長押し(ピッ、ピーと鳴るまで)して、セレクトメモリーライト状態(001とMRが点滅)にする。
4、【MODE】を短く押すと、液晶画面に《BANK》の文字が一瞬表示されます。
5、【BAND】を短く数回押して、液晶画面に《A-03》を選択。
6、【V/M】を長押し(ピッ、ピーと鳴るまで)するとバンクチャンネルA-03に003の周波数が登録されます。
▶︎ メモリーチャンネル004を登録する
1、【V/M】を短く押して《メモリーモード(MRが表示された状態)》にする。 ※場合によっては【V/M】を数回押す。
2、【DIAL】ツマミを回転させてメモリーチャンネル004を呼び出す。
3、【V/M】を長押し(ピッ、ピーと鳴るまで)して、セレクトメモリーライト状態(001とMRが点滅)にする。
4、【MODE】を短く押すと、液晶画面に《BANK》の文字が一瞬表示されます。
5、【BAND】を短く数回押して、液晶画面に《A-04》を選択。
6、【V/M】を長押し(ピッ、ピーと鳴るまで)するとバンクチャンネルA-04に004の周波数が登録されます。
上記作業を行うことで、バンクAに4つの周波数が登録されました。
バンクA | |||
A-01 | A-02 | A-03 | A-04 |
001チャンネル | 002チャンネル | 003チャンネル | 004チャンネル |
304.8(小松TWR) | 118.25(小松TWR) | 275.80(小松GND) | 121.70(小松GND) |
バンクに名前を登録する
バンクAのままでは、どの空港用の設定なのかわかりづらいですよね。そこでバンクAに小松飛行場のコード「RJNK」を登録します。
●メモリーネーム/バンクネーム/スキャンネームを入力する
アイコムIC-R6 取扱説明書 | |
5 メモリーを使う ■バンクネームを入力する |
50ページ |
▶︎ バンクAの名称をRJNKに変更する
1、【BAND】を短く数回押し、メモリーモードを表示。
2、【DIAL】ツマミを回転させてAバンクを呼び出す。
3、【V/M】を長押し(ピッ、ピーと鳴るまで)して、MRと001が点滅した状態にする。
3、【MODE】を数回押して、ネーム項目(B NAME)を選択する。
4、【FUNK】を押しながら【DIAL】ツマミを回転させて「R」と入力。
5、【DIAL】ツマミを回転させてカーソルを右に移動「RJNK」。
6、工程5〜6を繰り返して「RJNK」と入力。
7、【V/M】を長押し(ピッ、ピーと鳴るまで)します。
上記作業を行うことで、バンクAに名称が「RJNK」と表示されるようになりました。
RJNK | |||
A-01 | A-02 | A-03 | A-04 |
001チャンネル | 002チャンネル | 003チャンネル | 004チャンネル |
304.8(小松TWR) | 118.25(小松TWR) | 275.80(小松GND) | 121.70(小松GND) |
飛行場の設定を増やす場合
飛行場ごとにチャンネル割り当てを10単位で区切り登録します。飛行場をバンクに登録すると、飛行場を増やすことができます。
●一例
小松飛行場 | 岐阜飛行場 | 小牧飛行場 | 百里飛行場 |
バンクA | バンクB | バンクC | バンクD |
001〜009チャンネル | 011〜020チャンネル | 021〜030チャンネル | 031〜040チャンネル |
活用方法はさまざま
IC-R6は多機能なエアバンドレシーバーです。運用方法は様々なので、紹介した以外の使い方もあります。慣れてきたら自己流にカスタムセッティングを施し、使いやすくカスタマイズしよう。
アイコム IC-R6の運用方法
写真撮影時の運用方法は「バンクスキャン」を活用します。
●バンクスキャンを利用する
アイコムIC-R6 取扱説明書 | |
6 スキャン機能を使う ■BANK-*(バンクスキャン) |
67ページ |
1、【V/M】を押し、メモリーモードを表示。
2、【MODE】を長押し(ピッ、ピーと鳴るまで)する。
3、【DIAL】を回してバンク(例:RJNK)を選択。
4、【MODE】を短く押すとスキャンが開始します。
バンクスキャンの仕組み
バンクスキャンを開始すると、バンクごとに登録した周波数すべてを巡回し、信号を察知すると自動的に受信。通話が終了すると、再度巡回を自動的に開始して、再度信号を察知すると自動的に受信する仕組みです。
スキャンイメージ |
例:304.8 → 118.25 → 275.80 → 121.70 → 無限ループ |
ロック方法
ダイヤルやボタンに触れて設定が変わることがあります。そのようなときはロック機能を活用します。
1、【FUNK】と【BAND】を長押しすると、液晶画面に《鍵マーク》が表示されます。同じ操作をすると解除できます。
カメラマンなら最低限知っておきたい航空管制
航空無線を大雑把に説明すると以下の通りになります。まずはエプロンにてGND(クランド)無線で交信が開始し、滑走路に移動するとTWR(タワー)に移行。そのまま離陸する感じです。着陸時は逆になります。
▼離陸時の運用
エプロン(駐機場)〜滑走路 | GND(クランド) |
滑走路〜上空 | TWR(タワー) |
▼着陸時の運用
上空〜滑走路 | TWR(タワー) |
滑走路〜エプロン(駐機場) | GND(クランド) |
最低限知っておきたい専門用語
航空無線は英語により運用されており、アルファベットや数字の読み方も独特です。いきなり覚えるのは大変なので、ひこ〜き撮影に欠かせない3つの用語を抜粋しました。とりあえず下記3点が聞き分けられるようになれば写真撮影としては十分です。
ランウェイ●●
風向きによる滑走路の運用状況を示す用語。エアバンドで当日のランウェイを知ることで、離着陸の方角がわかります。TWR&GNDで聞くことができます。
コールサイン
コールサインは飛行機の種類を示す単語。離着陸する機体を知ることができます。TWR&GNDで聞くことができます。小松飛行場の場合、コールサインは、スカる(アグレッサー)、じ〜ンズ(306SQ)、め〜ガス(303SQ)の他、風神や雷神などがあります。
リクエストハイレートクライム
離陸方法を示す用語。リクエストハイレートクライムが告げられると、豪快な離陸を撮影できます。一般的にGNDで聞くことができます。
フルストップ・タッチアンドゴー
着陸後の行動を示す用語。フルストップが告げられると機体はエプロンに向かいます。タッチアンドゴーと告げられた場合、着時後すぐに加速して再離陸します。
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