2021年6月2日、キヤノン公式ウェブサイトにてEOS R3の仕様が一部公開されました。画素数こそ非公開ですが、明らかにされた数々の仕様をもとに、現役αユーザーの私が「EOS R3の実像」に迫ってみました。あくまでも妄想記事なので、間違っていても責めないでくださいね。
「現役α使い」が感じたEOS R3の印象
正直「どえらいカメラを発売してきたな」というのが第一印象。EOS−1DX系を彷彿とする、ソニーミラーレス機にはない存在感を放つカメラですね。しかし、α1は高画素連写機という路線で攻めてきました。個人的な憶測になりますが、EOS R3は「本来EOS R1として開発されたカメラでは?」と思ってしまうのも事実です。このモデルの後にEOS R1が備えていると思うと、キヤノンの底力恐るべしです!
静止画スペックを比較
EOS R3の明らかになった仕様をもとに、ソニーα1との違いを「静止画・動画・ボディ形状」の3項目で比較しましょう!
EOS R5 | α1 | |
画素数 | 非公開 | 有効5010万画素 |
電子シャッター | 最高約30コマ/秒 | 最高約30コマ/秒 |
電子シャッター(Raw撮影時) | 最高約30コマ/秒 | 最高約30コマ/秒(圧縮RAW) 最高約20コマ/秒(非圧縮RAW) |
ブラックアウトフリー撮影 | 対応 | |
ローリングシャッター歪み | 大幅軽減 | α9 II比で約1.5倍低減 |
AF低輝度限界 | EV-7.0 | EV-4.0 |
手ぶれ補正 | 約8.0段(協調) | 5.5段 |
AF検出 | 人物(頭部・瞳) 動物・車・バイク |
人物(瞳) 動物 |
ファインダー | 約944万ドット・240fps | |
視線入力 | 視線入力(静止画のみ) | |
ストロボ撮影 | 電子シャッター可能 | 電子シャッター可能(1/200秒) |
記録メディア | CFexpress・SDカード | CFexpress Type A・SDカード |
<AF低輝度限界と手ぶれ補正はEOS R3圧勝>
EOS R3のスペックが段階的に明らかにされ、EOS R5より静止画&動画ともに性能が強化された印象です。電子シャッター30コマ秒とローリングシャッター歪みの大幅低減をアピールしていることからも、メカシャッターに頼ることなく電子シャッターを常用的に「ブン回せるカメラ」に仕上げられてきました。ストロボ撮影の電子シャッター撮影にも対応しましたね。
AF低輝度限界EV-7と手ぶれ補正協調動作約8段分という性能は、α1を凌ぐ圧倒的な性能です。このあたりは、α全般に共通する「弱点」になりそうです。
<画素数は意外と低め?>
画像数は非公開のままです。α1は、有効5010万画素の高画素機+高速連写性能を備えた「α9R」と呼ぶにふさわしい内容です。電子シャッター機の弱点とされるローリングシャッター歪みも、α9IIより1.5倍高速な書き出しスピードを実現することにより減少させてきました。
α9はレース撮影時などにローリングシャッター歪みを感じる時があるのですが、α1は「少し気になる時が稀にある」レベルに抑えられています。戦闘機の離陸を横から撮影すると背景がわずかに歪みますが、ほぼ気にならないレベルです。EOS R3が、どこまで歪みを抑え、ブラックアウトフリー撮影の是非が気になるところですね。
▲α1+SEL600F40GM+SEL14TCの組み合わせで撮影。地上最速クラスの被写体撮影で「背景の電柱がわずかに歪む」だけ。ほとんど気になりません。
<車&バイク認識はレースカメラマンを多く抱えるキヤノンの強み>
EOS R3は、被写体認識に「車・バイク」を搭載してきました。レースカメラマン業界は、キヤノンのシェアが圧倒的に多い「牙城」です。現場で徹底的にテストされているはずなので、完成度の高いシステムに仕上がっていそう。αで撮影している専業レースカメラマンは皆無に等しいので羨ましい限りです。
<ソニーαの強みはスバ抜けたテレコン性能にあり>
意外と知られていませんがソニーαの強みの一つに「テレコン性能が高いこと」が挙げられます。とくに1.4倍テレコンは、SEL600F40GMやSEL200600Gに装着しても、AFスピードがほとんど低下しません。解像度劣化も少なく、SEL600F40GM装着時の性能は「単焦点レンズの解像度」を維持しています。この点、EOS R3と近日発売予定のRF600mmF4にテレコンを装着した時のAFスピードや解像度が気になるところです。
<ライバルはα1ではなくα9IIIかも>
静止画性能を語る上で、EOS R3は画素数が非公開です。私の個人的な憶測ですが、α1同等の5000万画素は搭載されないと思います。EOS R3は8K動画について一切触れられていません。8K収録に必要な画素数は約3300万画素。画像処理エンジンが8K動画に対応できることはEOS R5で実証済みなので、このことから推測すると2000〜3000万画素が妥当な線ではないでしょうか?
α1の有効5010万画素搭載は、頭がおかしいレベルなんです。となるとEOS R3とα1を比較するのは時期早々。近未来に電子シャッター専用機として登場するのではないかと噂される「α9III」こそが実質的なライバルになりそうです。
<EOS R3の販売価格を予想する>
EOS R3の価格は公開されていません。ユーザーにとって気になるのは販売価格ですよね。現状、EOS R5の価格が50万円前後。α1は80万円前後。α9IIは50万円前後で販売されている状況です。個人的な妄想にありますが、EOS R5の本体価格に縦位置グリップとバッテリーを大型化により15万アップと見込み、初売り65万円を予想してみました。α9IIに縦位置グリップや予備バッテリーを追加して50万円中盤。そこからの10万円アップという感じです。すでに海外Youtuberに実機が貸し出されているので、発売時期は近そうな予感ですね。
<EOS R3のバッテリー大型化は歓迎されそう>
ソニーα全般に共通することなのですが、NP-FZ100バッテリー採用後の機種は、軒並みバッテリー持ちが劇的に改善されました。ところがα1は電気消費が激しく静止画を1日撮影することは不可能です。消費電力は、α9より30%ぐらい悪化した印象です。
EOS R3は、縦位置グリップ一体型ボディの採用に合わせ、大型バッテリーを搭載してきました。バッテリーの持ちは、α1より優れることが予想されます。
動画スペックを比較
EOS R5 | α1 | |
ログ撮影 | 4K Canon Log 3 | S-Log2/3、HLG、HLG1-3 |
8K撮影 | 8K30P/24P | |
4K動画品質 | 4Kオーバーサンプリング | 5.8Kオーバーサンプリング(super35) |
RAW記録 | 内部記録可能 |
<4Kオーバーサンプリングは引き分けか?>
EOS R3の動画性能は「4Kオーバーサンプリング収録」に対応していることが明記されました。α1は、スーパー35サイズ(クロップ)収録時に5.8Kオーバーサンプリングで撮影できます。ログ撮影は、両カメラとも収録可能です。EOS R3は、動画コンテンツ製作用カメラというより、報道向け(記者会見などの撮影)に特化しているような気がします。
<動画RAW内部記録はソニーが手を出せない部分?>
EOS R3の動画スペックで注目すべきは「動画RAW内部収録」を搭載してきた点。ソニーの業務用動画部門はテレビ局や映画製作を顧客に抱える泣く子も黙る部門であり、α1のような安価なカメラで内部RAW収録ができてしまったら下克上もいいところ。ヒエラルキーが崩壊するので「手が付けられない部分」になります。そのあたりの事情を見透かしたように動画RAW内部収録を搭載するあたりは、キヤノンマーケティングの恐ろしさであります。
ボディスペックを比較
EOS R5 | α1 | |
防塵防滴 | EOS-1D系と同等 | 防塵防滴に配慮 |
ボディ形状 | 縦位置グリップ一体型 | 縦位置グリップ別体式 |
ボディ材質 | マグネシウム合金 | マグネシウム合金 |
操作系 | ジョイスティック系=2個 ダイヤル系=3個 |
ジョイスティック系=1個 ダイヤル系=3個 |
液晶モニター | バリアングル | チルト |
重量 | 652g |
<EOS1DX系からの乗り換えを促すボディ>
EOS R3のボデーは、完全にEOS-1D系を踏襲する作りといえそうですね。まさに質実剛健、プロの過酷な現場で活躍しそうなオーラが漂います。バリアングルを搭載するあたりも、Youtuberに文句を言われる前に手を打ってきた印象です。様子眺めしていたプロカメラマンが、ミラーレスに本格移行するキッカケになりそうです。
α1は、600mmF4のような大型レンズを組み合わした時、グリップが小さく収まりが悪い印象が払拭できませんが、縦位置グリップが発売されているので危惧することはありません。
ただし、縦位置グリップ一体型ボディは、静止画撮影重視の方にはすんなり受け入れられると思いますが、動画重視の人にはα1のサイズ感が受けそうな予感です。
<新アクセサリーシューの雨対策は?>
キヤノンは、データ通信や電源供給可能な新アクセサリーシューを開発し、EOS R3に搭載してきました。ソニーは、アクセサリーシューの互換性を維持した「マルチインターフェースシュー」を搭載。外部マイクの電源供給やデジタル音声信号の通信を実現しています。駆動用電源が不要になるため、バッテリー充電が不要になり、有線接続によるミスを低減できます。
ところが、マルチインターフェースシューの「電子接点」は雨に弱く、数滴濡れるだけで端子が白色に腐食(顕微鏡による目視検査)し、通信エラーの原因になります。プロの現場では「マルチインターフェースシューの雨問題」が急務になっています。キャノンは後発だけに、どのような雨対策を施してくるか気になります!
まとめ
私はα1を1週間使用しましたが「α7RIVの高画素とα9IIの高速連写性能を1台に集約した弱点の見当たらないカメラ」という印象を受けました。注目すべき点は、高画素機でありながらローパスフィルターレスで攻めてきた点。GMレンズで撮影した画像は、ベールを1枚剥いだような凄まじい解像感を発揮します。
EOS R3が2000〜3000万画素機で登場するなら、正直なところα1の解像感には及ばないと思います。ライバルはローパスフィルター付きのα9系が妥当な線。α9IIIとのガチンコバトルを見てみたい気がします。
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