Text/Photo:ちゃんまさ
写真や動画を撮影していると、日々肥大化するデータの保存方法で頭を悩ませますよね。これらのデータは、長期保存が前提の上、消去が許されない大切なデータばかりです。パソコンやネットワークに精通した人なら安全な方法で保存できるかも知れませんが、専門知識に疎いクリエーターでも知識が無いなりに保存しなくてはなりません。
ネット上では「その方法ではダメ」「この製品が良い」と助言されることがあります。とてもありがたいことですが、見知らぬ発言者が未来永劫にサポートしてくれるわけではありません。というわけで、初心者は操作ミスでデータ損失する可能性があることを前提に、性能一辺倒ではなく、なるべく簡単にネットで情報が得られやすいNASシステムの導入を考えてみました。
Synology製NASは大人気!
引用:Synology
価格.comサイトでNAS人気売れ筋ランキングを検索すると、トップ20にSynology製品が6製品がラインクイン。1位のモデルは国内メーカーのRAID非対応モデルですが、RAID1対応のモデルとしては、総合2位のDiskStation DS218Jが売れ筋ナンバーワン(2023年2月時点)のようです。
引用:価格.com
レビューを閲覧すると多くの人がレビューや評価をおこなっており、多くの人がSynology製品を購入し、使用中であることがわかります。
Synology製品はネット上に情報満載
Synology製品をネット検索すると、購入済みの人がシステム構築の方法をブログ記事やYoutube動画などで公開されています。これらを参照すれば、付属マニュアルでわかりづらい点や注意点が親切に解説されているので、初心者に役立つはずです。
Synologyは台湾の会社ですが、初心者向け動画を日本語で公開しているのも頼もしいです。英語表記なだけで、初心者は心が折れてしまいますからね。
対抗メーカーにQNAPがありますが、購入者によるセットアップなどのブログ記事やYoutube動画はSynology製品に比べて少ない傾向でした。ネットワークの専門知識がある人にとっては、高性能&多機能のQNAP製品に魅力を感じるかも知れませんが、初心者にとってQNAP製品は敷居が高く感じます。
そのような理由で、私はSynology製品の中から導入候補を選択することにしました。
初心者にNAS4ベイ以上の管理は難しい?
私が保存したいデータは、写真・動画・デザインなどのデータです。テキスト系なら少量量のHDDでもたくさん保存できますが、写真や動画などのデータ量はサイズが大きいため、5年も経てば10TB以上に膨れ上がることが想定されます。
引用:Synology
2ベイでRAID1を構築する場合、10TBのHDD2枚使用すると実容量は10TBになります。しかし、4ベイでRAID5を構築すれば、4TBのHDD4枚使用して実容量は12TB、10TBのHDD4枚使用すれば実容量を30TBまで増強できます。
しかし、万が一の時、失うデータ損害も大きくなります。データ消失の最大原因はHDD破損ですが、実は操作ミスで消去してしまうケースが多いようです。ネット検索するとRAID5からの復旧でデータを全損させてしまったブログ記事も見つけました。大容量のRAIDを管理し続けることは、専門知識と膨大なコストが必要です。
というわけで、専門知識に長けていれば4ベイモデルを購入するのが得策ですが、無知な私はデータ管理し続ける自信がありません。
まずは2ベイを購入し、NASの操作に慣れながら、いずれ4ベイモデルを購入するのが最善策だと思ってきました。
Synologyの型番ルールを理解する
引用:Synology
Synology製品は、ルールに沿って型番がつけられています。下記に記載した「型番ルール」を知れば、どのような用途に向いた製品か判別できます。
Synologyの型番ルール
例:DiskStation DS220+ | |||
DS | 2 | 20 | + |
製品形状=デスクトップ型 | 最大HDDベイ数=2ベイ | モデル年式=2020年発売 | シリーズ名=plus |
型番が「DS220+」の場合、本体形状はデスクトップ型でHDDベイ数は2個。2018年ごろに発売されたplusシリーズ(高グレードモデル)に属するモデルとわかります。
シリーズの想定ユーザー
Synology DiskStationシリーズの使用用途は、下記のように想定されています。
シリーズ | 機種 | 想定用途 |
Plus+ | DS220+ | 高機能&ハイレスポンス 中小企業向け |
Value | DS223 ※新製品 DS218 |
ハイコストパフォーマンス 店舗や個人ユーザー |
DS218play | メディア性能重視モデル 店舗や個人ユーザー | |
J | DS220j | エントリーモデル 個人向け |
モデルチェンジ周期
シリーズ | 機種 | 発売時期 |
Plus+ | DS220+ DS218+ DS216+ |
2020/5/15発売 2023年1月時点で約20ヶ月経過 2017/9/25発売 約20ヶ月 2016/1/29発売 約20ヶ月 |
Value | DS218play DS216play |
2017/10/31発売 2023年1月時点で約63ヶ月経過 2015/10/ 9発売 約24ヶ月 |
DS223 ※新製品 DS218 DS216 |
2023/1/12 2017/12/15発売 約60ヶ月 2015/12/14発売 約24ヶ月 |
|
J | DS220j DS218j DS216j |
2020/3/12発売 2023年1月時点で約22ヶ月経過 2017/10/31発売 約30ヶ月 2016/3/14発売 約19ヶ月 |
DS220+やDS220jは、発売からすでに2年経過したモデルになります。2023年1月に発売されたDS223は、DS218の後継機種に該当し、約5年間販売中です。
Synology製品は、2〜3年でモデルチェンジする傾向にあります。2023年中にPlus+シリーズやJシリーズも新型が発売される可能性があります。
2023年2月現在で新規購入するなら、DS223を購入すれば現行機種として長期間使用できます。
Synology(2ベイ製品)の仕様比較
Synology DiskStation(2ベイ)製品のスペックを抜粋しました。
引用:Synology
DS220j(写真上)とDS218playはボディ形状が同一です。HDDの着脱にはプラスドライバーが必要です。
引用:Synology
DS223(写真上)とDS220+はボディ形状が同一です。フロントカバーは工具無しで簡単に着脱でき、HDDも工具無しでホットスワップ交換できます。
DS220+ | DS223 | DS218play | DS220j | |
CPU | Intel Celeron J4025 デュアルコア2GHz 最大2.9GHz |
RealtekRTD1619B ※4コア 1.7Ghz |
RealtekRTD1296 クアッドコア 1.4Ghz |
RealtekRTD1296 クアッドコア 1.4Ghz |
メモリ | DDR4 2GB ※最大6GB拡大可能 |
DDR4 2GB | DDR4 1GB | DDR4 512MB |
外付 インテーフェース |
正面 USB3.0×1 裏面 USB3.0×1 |
正面 USB3.2G1×1 裏面 USB3.2G1×2 |
正面 裏面 USB3.0×2 |
正面 裏面 USB3.0×2 |
フォーマット形式 | Btrfs、ext4 | Btrfs、ext4 | ext4 | ext4 |
ホットスワップ | 対応 | 対応 | ||
発売時期 | 2020/5/15 | 2023/1/12 | 2017/10/31 | 2020/3/12 |
市場価格 | ¥49,000円前後 | ¥40,700円前後 | ¥33,000円前後 | ¥27,000円前後 |
備考 | 暗号化エンジン | モデルチェンジでビデオエンジン削除 | ビデオエンジン搭載 |
仕様の違い
CPU
CPUは、PlusシリーズにIntel Celeronが搭載され、ValueとJシリーズは汎用グレードの同一CPUが搭載されています。DS223はCPUが新しくなりました。DS220jの新型には、DS223と同一CPUが搭載される可能性が高くなります。
メモリ
メモリは、クラスごとに容量で差別化されています。Plusシリーズはメモリ拡張に対応します。
USBインターフェース
USBインターフェースは、全機種裏面に採用されています。DS223とDS220+は、本体前面にもUSBポートが付きます。
フォーマット形式
フォーマット形式は、全機種にext4が採用されています。DS223とDS220+は、より高性能なBtrfsも選択可能です。
ホットスワップ
ホットスワップは、DS223とDS220+のみ対応します。
パーツ供給
Synology DiskStationシリーズは、電源や電動ファンが故障した時、保守パーツを購入できます。万が一故障した時でも、自分で修理できる可能性があります。
故障時の対応は、修理対応は実施しておらず、新品交換になるようです。
選択候補【1】 2ベイ・RAID1運用
長期利用が目的なので製品寿命も重要な要素になります。一番新しい製品はDS223であり、今後2年間は最新モデルとして利用できそうです。CPU性能は、インテル搭載のDS220+が優れますが、DS223はCPUが新しくなったのでDS218playやDS218Jより高速化が見込めます。フォーマットは、DS220+とDS223はBtrfsが搭載されています。
転送速度は、全モデルがギガビットイーサーネット対応なので、速度に大差ありません。となると、メモリ搭載量の違いによるレスポンスが選別基準になりそうです。DS220+とDS223はDDR4 2GBが搭載されているので有利です。
DS223は価格が高価なので、あと数千円を追加すればDS220+が購入できます。しかし、5万円の予算があれば4ベイモデルも購入できます。このように考えているときりがありません。最新型のDS223を購入し、浮いた予算でバックアップ用HDDを購入するのがベストと判断しました。
引用:Synology
複数の国内代理店が存在
Synology製品の日本国内代理店は、1社ではなく複数あります。製品自体は同じですので安心して利用できます。
引用:Synology
すべての製品にSynology社が製作した「NAS初心者ガイド」が付属します。購入前にメーカーサイトからダウンロードすることも可能です。
引用:Fieldlake
しかし、Fieldlakeが販売する製品は、代理店で独自作成した「目的別ガイトブック」が付属する製品も販売しています。Fieldlakeが扱う製品は、下記表に記載した通り、Amazonなどに限定されます。
しかも、目的別ガイトブックが「あり」と「なし」が販売中です。目的別ガイトブック「あり」の製品は、代理店独自品番「DS223/G」になります。
価格.comのランキングも「目的別ガイトブック付き」が売れていました。
国内代理店 | ガイドブック | 販売店 | |
Fieldlake (フィールドレイク) |
NAS初心者ガイド 付属 | 目的別ガイトブック 付属 代理店型番:DS223/G |
Amazon イートレンド |
NAS初心者ガイド 付属 | 目的別ガイトブック なし 代理店型番:DS223 |
Amazon イートレンド |
|
ASK (アスク) |
NAS初心者ガイド 付属 | 目的別ガイトブック なし | ツクモ ヨドバシカメラ ソフマップ エディオン Joshin web アプライド OLIOSPEC |
2023年2月現在、Amazonの検索欄で「DS223/G」を入力しても表示されません。売り切れ中の場合も表示されませんの下記リンクを用意しました。
選択候補【2】 1ベイ+外部HDD運用
ネット検索していると「RAID1」は、操作ミスした時、2枚同時に消去するのでバックアップとしては不十分との意見があります。
1ベイNAS+外部HDDバックアップ
選択候補2は、1ベイNASを母体にRAID1運用を諦め、USB接続した外部HDDにバックアップする方法です。その際、外部HDDは「ext4フォーマット」が一般的ですが、MACやWindowsで直接展開することはできません。
そこで、SynologyのOS(DSM)の「exFATフォーマット」機能を活用すると、外部HDDをexFATフォーマットした状態で自動バックアップできるようになります。NAS故障時の復旧はもちろん、MACやWindowsでデータを直接展開できるようになります。
ハードディスクは、NAS内蔵用1枚、外部HDD内蔵用1枚、合計2枚でバックアップ環境を構築できるので、コストパフォーマンスも向上します。
1ベイNASの候補
引用:Synology
Synologyの1ベイ仕様のNASは、DS118が最上位機種になります。
DS120Jの方が発売時期が新しいですが「CPU性能、メモリ容量、USB2.0」など、DS118とくれべて基本スペックが大幅に劣化します。
追記
USB2.0に大容量HDDを接続すると「不安定」「認識しない」など動作が不安定になるようです。USB外部HDDによるバックアップを前提とするなら「DS120」は避けた方が無難です。
DS118 | DS120J | |
CPU | RealtekRTD1296 クアッドコア 1.4Ghz |
Marvell A3720 デュアルコア 800MHz |
メモリ | DDR4 1GB | DDR3 512MB |
外付 インテーフェース |
正面 裏面 USB3.0×2 |
正面 裏面 USB2.0×2 |
フォーマット形式 | ext4 | ext4 |
ホットスワップ | ||
発売時期 | 2018/12/14 | 2019/12/12 |
市場価格 | ¥25,000円前後 | ¥16,000円前後 |
備考 | ビデオエンジン搭載 |
DS118は発売から4年以上経過しているのでモデル末期の可能性があり、DS223と同じCPUに変更される可能性も否定できない状況です。
QNAP TS-133という選択肢
引用:QNAP
Synologyの1ベイNASは、発売時期が古い状態。QNAPに選択範囲を広げると「TS-133」も選択肢に入ります。
DS118 | TS-133 | |
CPU | RealtekRTD1296 クアッドコア 1.4Ghz |
ARM 4コア Cortex-A55 1.8GHzプロセッサ |
メモリ | DDR4 1GB | 2GB |
外付 インテーフェース |
正面 裏面 USB3.0×2 |
正面 裏面 USB2.0×1 USB3.0×1 |
フォーマット形式 | ext4 | ext4 |
ホットスワップ | ||
発売時期 | 2018/12/14 | 2022/8/3 |
市場価格 | ¥25,000円前後 | ¥21,000円前後 |
備考 | ビデオエンジン搭載 |
CPU性能。メモリ容量、価格ともTS-133が有利です。
また、外部HDDでバックバックアップする時、HFS+に対応しているのでMacでそのまま認識します、ただし、exFATは有償ドライバーライセンスを購入する必要あり。
購入した製品は?
引用:アマゾン
さんざん悩んだ挙句、モデル末期と噂されるDiskStation DS220j/JPを購入しました。ここまで引っ張り申し訳ない気分です。RAID1運用も見直すことにします。RAID1やRAID5と聞くと「かっこいい」印象がありますが、コストと実際の運用を重視することにしました。
単独使用で1GbE上限の転送速度が見込める
MacとDS220j/JPを1GbEで接続した場合、読み書きの実測値は110MB/s前後が見込めます。目的が「データ保存」なので、110MB/s前後の転送速度で満足です。私の作業環境は「単独接続」が前提になるため、問題ないと判断しました。
複数同時接続が前提の場合は、上位グレードを購入した方が良いかもしれません。
RAIDを使わずUSBポート経由で外部HDDでバックアップ
DS220j/JPでRAID1運用する場合、コスパに優れた8TBを使用した場合、保存できる容量は8TB(実際は少し少なくなる)になります。この状態で、USBポート経由で外部HDDへバックアップすると、8TBのHDDが3枚必要です。
そこでRAID運用は諦めます。8TB×2枚をBacicで運用し、各データをUSBポート経由で外部HDDへバックアップします。そうすることで、8TB×4枚で16TBまで運用できます。
DS220j内蔵HDDや本体が故障した場合、外部HDDのバックアップを使い復旧します。
HDDはCMRを選択
引用:アマゾン
ハードディスクの記録方式は、CMRとSMRがあります。NASなどに適しているのは「CMR」方式です。ただし、NAS用は耐久性に優れる反面、価格が高価です。そこで、CMR方式で安価な製品を狙い買いして、外部HDDのバックアップで非常事態に備えます。
下位機種購入で諦めたこと
10GbEや2.5GbEは別途環境整備にお金がかかる!
10GbEや2.5GbE対応機種を選択すると、ファイルの高速転送が可能になります。しかし、ポテンシャルがを発揮するには、ハブ・ケーブル・パソコン側のポートなど、すべての機器を対応品に交換する必要があります。10GbEや2.5GbEに対応したNASを購入しても、単体だけではポテンシャルが発揮できません。
使用用途をファイルサーバに限定する!
DS220j/JPをファイルサーバとして使用するなら、CPU性能やメモリ搭載量に問題ありません。しかし、シノロジーOSで写真や動画を管理・閲覧する場合は、CPUやメモリの大きな負荷がかかります。
アプリを多用するなら上位グレードを購入した方が良いかもしれません。
外部HDDを2機接続するとUPSが使えない
問題点は、外部HDDを2機接続すると、USBポートがすべて塞がってしまうこと。空きポートがなくなるため停電時にUPSを使った自動シャットダウン機能が使用できなくなります。RAID構築中に停電したらデータが破損する恐れがありますが、今回はRAIDを使用しない方法を選択したので「破損する確率は低い」と思っています。
※USBハブの利用は未検証です。
まとめ
製品を購入するなら最新機種が欲しかったですがコストがかさみます。今回は、低価格の機種で我慢することで、浮いた予算を外部HDD購入に使い、安全確実にバックアップを取る方法を選択しました。
製品が到着したら運用前のテストを行います。その模様はブログ記事で報します。
コメント